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· 9 min read

OP/ED映像や作品の評も書いてますが、それはおまけです。曲の好きなものを選んでいます。

私はクラシック音楽はそこそこやってたけどポピュラー音楽の経験や知識はイマイチなので正確性はあまり期待しないでください。

後半

『reincarnation』(史上最強の大魔王、村人Aに転生する ED )

歌唱作詞作曲編曲
ChouChoChouChoChouCho村山☆潤

半音階進行のイントロが早くも不安定な雰囲気を作り出す。AメロはD durから始まるが、C durやB durに繰り返し転調する。拍子も4拍子が7/8拍子を経由して3拍子(ただしメロディは6/8的)になったりする。サビはシンコペーションや前出の3x2のリズムを用い、長調と短調を頻繁に入れ替えながら激しく進行する。一旦終わったかのように見せかけると更に、J-POPの典型的な進行にはない最後のメロディがE durの3拍子で演奏される。ここまでの不安定な激しさとは一転してホ長調3拍子の安定した喜びに満ちたメロディで締めくくられる。

全体的に難しいことをたくさんやっていて、作曲も歌唱も大変だったろうなと思う。ChouChoは声が綺麗くらいのイメージしかなかったのだけど、こんな実力あったんだなと驚いた。

ちなみにアニメEDで使われているバージョンと配信されているバージョンは違う録音のようで、具体的には「かぎは」の音が違う。納品時期の影響なのかな。『デジモンクロスウォーズ 〜時を駆ける少年ハンターたち〜』のOP曲『STAND UP』もアニメ版と配信版(?)では違っている(シンセパートが1つ消えてる)。

映像

激しい曲調に対して映像はEDらしく止め絵スライドが主。赤と青の2つの月ってこれ『RPG不動産』?

作品

安心と信頼のシルバーリンク異世界枠(シルリン!)。転生したら魔法が衰退しているという設定は『魔王学院の不適合者 〜史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う〜』や『失格紋の最強賢者』の系譜。村人要素は1話で終わってそう。

クオリティ面ではこの枠の守護者たる伊藤浩二や超多作のベテラン小澤和則が定期的に参加しており、やるときはやる。特に5話Bパートは大部分を伊藤浩二が絵コンテから原画までやっているようで迫力のあるビーム・煙・空中戦は一見の価値あり。

『僕らが愚かだなんて誰が言った』(骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中 ED)

歌唱作詞作曲編曲
DIALOGUE+田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)kz(livetune)

リズムが非常に難しい曲。専業ではない歌手がこの曲を違和感を感じさせないレベルで歌いこなしていることに驚く。しかも揃っている。正統派の発声ではないが声のパワーも表現力も申し分ないのはさすが声優というべきか。Bメロ前のタム?の3連符がシャレオツ。低音が薄く高音側にペラペラキラキラしたサウンドを厚めに配置しているのがいかにもkzっぽい…kzっぽくない?

映像

色彩といいCGの質感といい、どことなく『ブレイドアンドソウル』EDだし『錆色のアーマ』EDだよな。あるいはデッサンの破綻を起こさないCGだからこそできる長尺カメラワークという意味では『D_CIDE TRAUMEREI THE ANIMATION』EDかもしれない。

作品

圧倒的強者による世直し道中という趣向は『水戸黄門』『月が導く異世界道中』の系譜。こっちの方が露悪的だが。

『Venus Line』(BIRDIE WING -Golf Girls' Story- OP)

歌唱作詞作曲編曲
広瀬香美広瀬香美広瀬香美幕須介人

喉声でありながらずっしり中まで詰まったパワーのある歌声。相当鍛えてないとこんな声出せないだろうと思ったら本当に筋トレを重視しているらしい。発音には若干癖を感じるがそれも個性と納得させられるだけのパワーがある。サビ前のちょっとしたオシャレ和音も良い。レディ…

映像

いかにもアニメOPっぽいアニメOP(奥から手前にキャラクターが流れてきて左右に別れていくやつとか、まだ見ぬ強敵たちの顔がたくさん並ぶ1枚絵をPAN UPしていくやつとか)。こういうのでいいんだよ、こういうので…。

作品

面白い。軸となるライバル関係をしっかりと描きつつ、フィクションならではの遊びもある。視聴者を笑わせるための超展開であっても作中のキャラクターは至って真面目にやっているのが大事なのだと思う。稲垣隆行 a.k.a japan moemoe animation director(今はjapan golf? animation director)はやはりすごい。

というか彼がタイムボカンに軟禁されている間になろうアニメの氾濫によって周囲の環境が変わってしまった感はある。なろう小説は1話単位で読者からのフィードバックを受けながらランキング上位を目指して書かれるからだろうか、そっちの系譜のアニメは登場人物が視聴者と同じ目線を持っていてツッコミを入れるということが当たり前にある。しかし作品世界内で完結しないキャラクターというのは造形の放棄に思えて好きではない。

『Feel You, Heal You』(ヒーラー・ガール OP)

歌唱作詞作曲編曲
ヒーラーガールズ松井洋平高橋諒高橋諒

正統派の艷やかな発声と伸びやかなビブラートが心地よい。伴奏の編成も本格的で、ダイナミクスレンジの大きさを活かしてサビの入りを盛り上げている。

映像

豪華。スラヴ叙事詩。超自然的な歌の力の映像化の思い切りが良すぎてちょっとビビる。

作品

萌えとかトンチキやってる回は好きだけど真面目に治療してる回はあんまり好きじゃない。

· 5 min read

※本記事内の画像はアニメ『神霊狩/GHOST HOUND』第1話より研究のために引用したものであり、それらの権利はProduction I.G・士郎正宗/「神霊狩/GHOST HOUND」製作委員会に帰属します。

ちょっとアニメのリアルタイム視聴に疲れてきたので、昔のアニメを見る習慣を始めてみようと思う。

『神霊狩/GHOST HOUND』は数年前に途中まで見てやめてしまったアニメだ。何か過去作を見ようと考えたとき、友人に勧められたので視聴を再開することにした。

全話このような記事を書くつもりはないが、見どころがある回は適宜取り上げたい。

Aパートの話の自然な回し方

  1. 太郎が外に出ると慧に会う
  2. 慧は酒を取りに来ただけだったので香りのついたシャンプーを使っていた
  3. 太郎がその匂いに気づく
  4. 慧が嗅覚の良さを褒めて「さすが蔵元の惣領」と言う
  5. 太郎はその立場をあまり快く思っていない
  6. 母は仏壇に米を供えている
  7. 父は慧が作った玄米酒を飲んでいる
  8. 太郎は父に自分に酒蔵を継いでほしいのか尋ねる
  9. 本当は姉が継ぐはずだったと言う
  10. 両親が過敏に反応し居づらくなった太郎は一人で2階に去る
  11. そこで姉の部屋のドアを開けて中を見る

いつもどおりの古森家の生活の中に2という些細なイレギュラーが発生し、それによって平和に見える家庭に今でも影を落とす姉の死という闇が姿をあらわす。全体にリアリティレベルが高くダウナー(僕は湿度が高いなどと表現したりする)な作風であるがゆえに、ちょっとした不気味さが視聴者には増幅されて伝わる。

学校の色彩の乏しさ

  • 自然は陰影豊かに描かれる
  • 一方で学校は白っぽく、彩度を下げて無機質に描かれる
  • メインキャラ以外の彩度を下げてメインキャラを際立たせる表現も見られる(常時ではない)

校長室での照明の使い方

校長室で太郎はカウンセラーの平田篤司と出会う。平田との会話のなかで太郎の抱えている恐ろしい記憶と謎めいた忘却が少しずつ視聴者に明らかにされる。その意味でこの校長室は真実を明らかにする場である。

  • 窓の外がハイライトで塗りつぶされているのは真実を照らす光のメタファーだろうか
  • 表情を変えずにただ太郎を見つめる平田が怖い。この怖さは完全な止め絵を作れるアニメーションならではもので、順光で陰影が少ないことが表情の乏しさをさらに強調している。
  • 一方で逆光となる太郎の生気のない表情は、暗く表現できる

· 30 min read

過去分はこちら

作品賞: 怪物事変

©藍本松/集英社・「怪物事変」製作委員会

  • 夏羽(CV:藤原夏海)
  • 織(CV:花江夏樹)
  • 晶(CV:村瀬歩)
  • 野火丸(CV:下野紘)

冗談みたいなキャスト。夏羽(13歳)・織(14歳)・晶(15歳)のメイン3人は密度が高い。少年の成長は速いし3人の性格も違うので、ここに3人詰め込んでもちゃんと違いで物語を作れる。むしろその方がキャラが立つ。

加えて興味深いのは紺の存在だ。夏羽とフラグが立ってるような立ってないような微妙な立ち位置だが、異性との未熟な接し方もまたショタの魅力だ。逆説的だがショタを魅力的に描くためには相手役となる異性が必要になる。

キャラの配置だけではなくエピソードも本格派で、織の母親が文字通りの『産む機械』にされていたり、晶と結が雪女の里に産まれた貴重な男として種馬扱いされていたりと、性を搾取する話が続く。思春期の少年たちの前に立ちふさがる問題として嫌な生臭さと恐ろしさがある。

総評として、ショタへの歪んだ愛情がショタの全てを描きたいという情熱に繋がり、3人ものショタをそれぞれひどい目に遭わせるという作品に昇華されており、今年の作品賞にふさわしい。

キャラクター10選(放送時期順)

クロ(CV:永塚拓馬)―『怪病医ラムネ』

© 阿呆トロ・講談社/「怪病医ラムネ」製作委員会

中学生(中学2年生との情報もあるが確認できなかった。中学入学直後の事件が12話の1年前という言及があるのでたぶん正しい)。怪病の患者としてラムネのもとに通ううちに弟子になった。低身長でかわいくて無愛想だが道場の子なので強い。エッチなことに興味はありませんみたいな顔をしているが、兄が2人いるから知識は十分だろうし、絶対ラムネとはやることやってると思う。

『怪病医ラムネ』はトンチキお悩み解決アニメの名作。「怪病」は「調味料の涙」「竹輪の陰茎」など本当に奇妙なものばかりだが、これらの病気は患者の精神的な問題とリンクしている。怪病やその治療法の表面的なトンチキさを笑っていると、いつの間にか悩みの本質に引き込まれてドラマを体感している。それぞれの症例という横糸に対して縦糸となるラムネとクロの物語もしっかりしている。

近導ユウユ(CV:蒼井翔太)―『カードファイト!! ヴァンガード overDress』

©VANGUARD overDress Character Design ©2021 CLAMP・ST

中学3年生。2クール主人公やってても未だにバックグラウンドが見えてこない謎多きキャラクター。素直でひたむきな性格で周りの人間を動かす。女装はメグミの男装と対を成す重要なファクターかと思っていたがまだよくわからない。学校では一人で浮かない顔をしている。

『カードファイト!! ヴァンガード overDress』は今年の最強級アニメだ。特に優れているのは脚本で、題材、情報の出し方、抽象的表現、セリフ回し、反復と対比、各話のまとまりと全体構成のバランスなど、全てにおいてレベルが高い。演出と脚本の連携も良く、映像で伝わる情報は敢えてセリフにしなかったり、逆に自然とは言えない会話の応酬でも映像とのコンビネーションで成立していたりする。クレジットから脚本に関わっていると思われるスタッフを挙げてみると計6人(シリーズ構成2人、シリーズ構成補佐、シナリオ強力、原作スーパーバイザー、カードファイト構成)もおり、この陣容の厚さが完成度の高さに結びついているのかもしれない。

蒼井翔太は甘く高い声と微妙な演技力という特性から声優としては飛び道具なのだが、脚本にこれだけの強度があると可もなく不可もない声優よりはこういう尖った声優の方が活きる気がする。

作画はメインアニメーターのKANG WonyeongとKIM Youngbumが上手い。

杉山亮仁(CV:藤井ゆきよ)―『ミュークルドリーミー みっくす!』

©2021 SANRIO CO.,LTD. ミュークルドリーミー みっくす製作委員会・テレビ東京

中学1年生。1期終盤に登場し、2期からレギュラー。アメリカ帰りの超天才少年にして、1期のメインキャラの遼仁の弟。いつのまにかアクムーと手を組んでわけがわからないくらいエッチなユニフォームを着てた(このピンポイント脇見せは何?)。その後ゆめに一目惚れしてふにゃふにゃになった。藤井ゆきよの演技は過剰なイントネーションと舌足らずな喋りが特徴的。中学1年生にしてはちょっとウザすぎる喋りなんだけどずっと聞いてると癖になる。

『ミュークルドリーミー みっくす!』は『ミュークルドリーミー』の2年目。特に何も成さずに終わった1年目を受けて、それに輪をかけて何もしていない。情報密度でYouTuberに負けないための節操のない演出が特徴。4週に1回程度虚無の実写番組が入る編成は謎。

双頭院学(CV:村瀬歩)―『美少年探偵団』

©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト

小学5年生。美少年探偵団団長。他のメンバーのように一芸があるわけではないが、強烈な美学で求心力を発揮している。長ズボンショタも良い。

『美少年探偵団』は西尾維新。それぞれの事件は他愛のないもののように見えて実は深く暗いものだし、少年たちもそれぞれの特技で無敵のように見えてそうではない。小説原作ならではのスケールの自在な変化をシャフトが演出力でなんとかしている。

ガロウ·エジル(CV:内村史子)―『チート薬師のスローライフ~異世界に作ろうドラッグストア~』

© ケンノジ/一二三書房,チート薬師製作委員会. All Rights Reserved.

年齢不詳。魔王。レイジのポーションの中毒になり、ノエラに惚れてキリオドラッグの従業員になった。ノエラに「匂いが嫌い」と言われ、それを解消するためにレイジの遺伝子を組み込んだ薬(下品)を飲む。異世界転生・スローライフ・美少女動物園という作品に、レイジの取り巻きに恋するショタが仲間入りするというのは新鮮だ。

『チート薬師のスローライフ~異世界に作ろうドラッグストア~』は異世界転生スローライフの傑作。この種の作品が陥りがちな世界観・能力の描写への偏重を避け、漠然かつ便利な能力を使ってお友達の困りごとを解決していくドタバタコメディで視聴感は『ドラえもん』に近い。EDの演出も懐かしい感じで、今年一番「こういうのでいいんだよ!」と言いたくなる作品だった。

南雲孝士(CV:山田美鈴)―『女神寮の寮母くん。』

©2021Ikumi Hino/女神寮

中学1年生。父親の失踪によって天涯孤独になり、成り行きで大学寮の寮母になる。スケベな事件を繰り返しながら寮生たちと親交を深めていく。なぜか女の乳首が見えるバージョンでも孝士のちんちんは見えない。中学1年生だからギリギリかわいい弟分としての「絵」が成立するけど、1,2年したら関係は変わってしまうよなあ。でもそういうこと(この作品をラブコメとして成立させるために必要なご都合主義)に自ら疑問を持って問いかけていくキャラクターというのは新鮮だった。

孝士くん、私達には言ったことがあったわよねえ。男だからとか、男だからできる仕事とか。そんな風に自分が男であることをちらつかせておいて、いざとなったらみんななかったことにしちゃうの?もしかしたらあなたの今までの思わせぶりな行動であなたを異性として意識している子がいるかもしれないのに。

女神寮は俺がようやく見つけた居場所なんです。だからここ最近、いろいろモヤモヤしたり思うことはあっても考えないようにして、ずっと女神寮に、みんなといたいから気にしないふりをしてきたのに。男女のそういうのとか関係なくただ今を守りたい!ただ嫌われたくないって思うのはダメなことなんですか!

『女神寮の寮母くん。』はトンチキスケベとコスプレイヤーを売り出したい商業的事情が悪魔合体してなぜか佳作になった、めぐり合わせの奇跡のような作品である。各キャラの公式コスプレイヤー(?)によって構成される2.5次元ユニット(??)『女神寮生』が主題歌を歌っている。メインキャラクターの1人がコスプレイヤーという設定であり、作中ではコスプレは「いつもと違う自分になることで自己を解放する」ものと定義されている。実際にコスプレを通して孝士が自己の悩みを吐露する回が中盤の山場になっている。

ここにいるのはいつもと違う自分。今だけ、ここだけ、いつもの自分じゃ言えないことだって言えちゃう。誰にも遠慮する必要なんてない。

ぐんまちゃん(CV:高橋花林)―『ぐんまちゃん』

Copyright© 群馬県 All Rights Reserved.

年齢不詳。子供ではあるようだ。設定上は性別はない。「ぐんま」に生息する謎のクリーチャーで、ぐんまパワーによって人々を洗脳している。世界の全てに対して深くコミットすることがなく、純真さと直観だけで受け答えする。それが本物の「子供らしさ」なのかもしれない。能力を使うときに尻尾が屹立する。

『ぐんまちゃん』は…何なんだろう。群馬県が製作している、群馬県のキャラクターを使ったギャグアニメ(?)だ。群馬県を模した「ぐんま」に生きる人々(ダメな大人たちを多く含む)を天真爛漫なぐんまちゃんの目を通して眺めるという構造は同じ本郷みつる監督の『クレヨンしんちゃん』と似ている。そこにブラックユーモアや風刺、メタ表現をマシマシにしていて、しかもそれを税金で作っているというのがめちゃくちゃ面白い。

監督・脚本を務めた本郷みつる監督の手腕は凄まじい。脚本と絵作りが直列つなぎになっている一般的なアニメの作り方では出てこないような、アニメという表現形式を限界まで使い倒す脚本だった。実体化した「責任感」(考える人のような見た目をしている)にぐんまちゃんが物理的に押しつぶされるとか、実体化した天の声と一緒にぐんまを観光するとか。

天ノ河宙(CV:田村睦心)―『デジモンゴーストゲーム』

© 本郷あきよし・フジテレビ・東映アニメーション

中学1年生。寮生活ショタ。かわいいので先輩にエッチなイタズラされてそう。同級生の頼みごとも断れないし。

あまりキャラクターの内面を描かない作風なので掴みどころがない。小学生の頃は母親が不在で父親が研究に夢中なので家事を担当していたようだ。突然弟になったガンマモンの面倒をよく見ているのはその延長なのだろう。父親の失踪については情報収集はしているもののそれほど必死な様子はない。敵対するデジモンに対して戦って倒す以外の解決法を探すことが多い。こう書くと優しいいい子のように見えるが、目的のために平然と危険に身を投じたり法を犯したりする。実はどこかに根本的なズレがあって、それが今後の展開のキーになったりするのかもしれない。

『デジモンゴーストゲーム』は2021年10月からのニチアサアニメ。デジモンシリーズの伝統と、東映ニチアサスタッフが得意とするホラーを組み合わせている。1クール経過した時点で何がやりたいのかはよくわからない。各話のクオリティは演出家次第。

四谷恭介(CV:花守ゆみり)―『見える子ちゃん』

©泉朝樹・KADOKAWA刊/見える子ちゃん製作委員会

小学5年生。姉のキスマークを確認するために風呂に乱入する剛の者。ホラーを一人で見るのが怖いからと姉を頼ったり、うなされていた姉を起こして「やらしい夢でも見てたの」と質問したり(???)、いわゆる姉弟モノシチュエーション要員でありながら、独自のキャラクター性も発揮していた。

深夜アニメでは視聴者の年齢層が高いのでショタが主役を張ることは少ないが、ある程度強度がある物語をやろうとするとキャラクターの家族を描かないわけにはいかない。ショタの需要はそういうところにもある。

『見える子ちゃん』は「見え」すぎる主人公がいろいろな状況で幽霊を「見ないふり」するというホラー系コメディ。序盤は同じことの繰り返しで退屈に感じたが、中盤以降は自ら確立したパターンに対するずらしや崩しがあり楽しめた。自ら積み上げた作品世界をフル活用して面白さに転化していく構成はテレビアニメの鑑だ。

恵(CV:佐藤健)―『竜とそばかすの姫』

©️2021 スタジオ地図

14歳。父親に虐待され、Uの世界では竜として暴れまわっている。今回は高校生の女の子が主人公と言い張った細田守が案の定繰り出してきた伏兵。

Uで妙に優しくしてくれて胸まで押し付けてくれたお姉さんといざ生身でビデオ通話してみると後ろに彼氏ヅラした高身長イケメンが立っていたわけで、そのときの彼の心情を想像すると笑ってしまう。ラストで生身で抱き合ったときもそのことを考えていたんだろうか。pixivで調べるとそういう切り口の二次創作はちゃんと存在していたので、みんな気になってたらしい。

『竜とそばかすの姫』は細田守の最高傑作にして最大の問題作。めちゃくちゃな作品なんだけど、たぶんもうありきたりな批判なんか気にしてないんだと思う。沼田友さんのレビューがおすすめ。

その他一言コメント

ロイド(CV:花守ゆみり)―『たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語』

実はムキムキ

ルーデウス・グレイラット(CV:内山夕実)―『無職転生 ~異世界行ったら本気だす』

これはなぁ〜ショタじゃないよなあ。というか10歳であの長さの陰毛ってかなり早いしもしかして1年が365日より長いですか?

甲斐ミナト(CV:山谷祥生)―『プレイタの傷』

序盤で拉致されてずっと敵とおしゃべりしてた。

知念実也(CV:永塚拓馬)―『SK∞ エスケーエイト』

女性向け美少年アニメでのショタ枠。こういう場合身長や声は成人寄りに設定しながら性格を差別化のために幼めに寄せることが多い。そういうのはあんまり好きじゃない。

劉昴星(CV:藤原夏海)―『真・中華一番!』

チャーーーーーーハン!ジュチにメイリィを取られそうになって煩悶しながら鍋振ってるシーン。

“飛天大聖”ジュチ(CV:小野大輔)―『真・中華一番!』

悪いやつじゃあないんだよな。EDのジュチは楽しそうに踊りながら料理していて、こちらが彼の本質なんだと思う。

クラっち(CV:船戸ゆり絵)―『マジカパーティ』

ケツのラインがセクシー・・・エロいっ!

足利飆太(CV:矢野奨吾)―『美少年探偵団』

割と性欲出してくる枠。声が良い。

梶田シノブ(CV:東内マリ子)―『カードファイト!! ヴァンガード overDress』

味方を喰らって強くなるモンスターを使い、対戦相手を煽りまくるバッドマナープレイヤー。典型的なクソガキ。でも自分の勝ち方にこだわるという美学もある。

花垣武道(CV:新祐樹)―『東京リベンジャーズ』

過去を変えて現在に戻ったら、一度もセックスを経験しないまま非童貞になりそうでちょっと面白かった

麻中蓬(CV:榎木淳弥)―『SSSS.DYNAZENON』

なかなかないローテンション演技。背が低くてかわいい。話はあんまりパッとしない終わり方だった。

©円谷プロ ©2021 TRIGGER・雨宮哲/「DYNAZENON」製作委員会

知念類(CV:北守さいか)―『白い砂のアクアトープ』

3回くらいちょろっと出てきた気がする。幼いうちから結婚を意識しているショタは良い。大人に対抗心を抱いてやっぱり負けるショタも良い。でも物語にはほとんど活かされなかった…。

伏辺或斗(CV:堀江瞬)―『D_CIDE TRAUMEREI THE ANIMATION』

つらい思いをしながら気丈に振る舞っているショタは良い。

あおま(CV:内田彩)―『ぐんまちゃん』

ぐんまちゃんよりもちんちんが小さそう。両親が教師で厳格というのもかわいい。

長名なじみ(CV:村川梨衣)―『古見さんは、コミュ症です。』

いろんな意味でショタなのかよくわからないけど、曖昧なのはとりあえず入れておく。村川梨衣は本作の最大の功労者だね。

ルーグ(CV:小市眞琴)―『世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する』

全裸クネクネダンス(ねっとりカメラワーク)で大爆笑。声変わり後(CV:赤羽根健治)も夢精したり娼館通いがバレてたりやたらとロマンティックな演出でセックスをしてたり、全部面白い。月夜涙先生のかったるいパートを飛ばす意志力と力強く簡潔なセリフ回しのセンスは本物だと思う。

桜井優人(CV:堀江由衣)―『先輩がうざい後輩の話』

高校生でその容姿や性格は設定に無理ありません?

ボッジ(CV:日向未南)―『王様ランキング』

ダイダとの年齢差で考えるとボッジって思ったより年齢高そうなんですよね。

ウィル(CV:河瀬茉希)―『最果てのパラディン』

女性声優を当てようっていうのはどういう判断だったんだろう…?今期の夢精枠でルーグと双璧を成す。

イブロギア(CV:堀江瞬)―『魔王イブロギアに身を捧げよ』

かわいい系がスレたおじさんを攻めるのも良い。

二宮(CV:花江夏樹)―『漁港の肉子ちゃん』

小学校のクラスメイトって、一生で関わる人間の中でトップクラスに不確定性が高くて、予想もつかない人間がいたりしますよね。もの静かでよくわからなくて、何か変な動きしてて、でも話してみるとしっかりした自分の世界を持っているいいやつだったりする。

ビーバー(CV:潘めぐみ)―『サイダーのように言葉が湧き上がる』

ラテンアメリカ系ショタ。宮沢康紀作画で動きまくったけどストーリーにはそんなに絡まなかった。

トウマ(CV:工藤阿須加)―『アイの歌声を聴かせて』

ヒロインの相手役が弱そうなメカオタクなのは意外性がある。紀伊カンナのデザインは見事。さすが若い男を魅力的に描く本職だけある。

恩田順平(CV:白石涼子)―『映画 さよなら私のクラマー ファーストタッチ』

姉がフィジカル的に男子に対抗できるギリギリのチャンスを掴むために犠牲になった男。それはまさしく分水嶺であって、姉とは対照的に順平はこれからどんどん強くなる。そういう儚さもさ、いいんだよな。

総評

今年も例年通り難産だった。単純に一年分思い出して振り返るというのが大変なんだ。加えて年々アニメショタをお下品な目で見られなくなっている気がする。自分の加齢のせいかもしれないし、あるいは単に作品とのめぐり合わせなのかもしれない。それでも自分の独自の視点を持つことと、長い時間をつぎ込んだアニメ視聴という活動をきちんと総括することには意味があると思うので、情熱がなくなっても義務感で続けていきたい。

各キャラクターの欄では触れられなかったのは声優の話だ。2021年現在のショタ声優で強いのは藤原夏海・田村睦心・小市眞琴。花守ゆみりも上手い。

お読みいただきありがとうございました。2022年もよろしくお願いします。

· 8 min read

※本記事内の動画はアニメ『デジモンゴーストゲーム』より研究のために引用したものであり、それらの権利は本郷あきよし・フジテレビ・東映アニメーションに帰属します。

直井正博

東映アニメーション作品に長く参加しているアニメーター。歴代ニチアサ作品で一人原画や作画監督を多く務めている。仕事が速くてかわいらしい絵を描く人というイメージだったのだが、『デジモンゴーストゲーム』2話で直井正博っぽい絵柄でかなり上手い芝居が連発されていて驚いたので記事を書くことにした。

宙の寮の自室のシーン(39カット)と続く上野総合博物館のシーン(25カット)が担当だと思う。根拠は僕の脳内での画風照合ときりの良さ。原画の先頭にクレジットされているので担当箇所が多かったことは想像できるが、総作画監督に二階堂渥志、作画監督に宇代祐規と大山康彦がクレジットされているので完成画面への貢献度が高かったのが誰かはよくわからない。絵コンテは中村亮太・三塚雅人、演出は中村亮太。

カット紹介

ここに掲載した動画が本来のタイミングを保っているという保証はない(某動画配信サービス。

1. 右足を押さえて左足でジャンプしながら1回転

人体をいろんな向きから描かなきゃいけないからシンプルに難しい。キャラ芝居ではしばしば負担軽減のために接地面を見せないレイアウトを使うが、ここではしっかり足も描いている。非現実的なくらいオーバーなポーズが含まれていて「痛い」ということがしっかり伝わる。

2. ハンバーガーを服の中に隠して周囲をキョロキョロ見回しながらドアを開けて部屋を出る

日本語にするだけでいかに複雑な芝居かわかる。無駄な動きがない。最後の1コマまで周囲を窺う右目が見えているのがコミカル。

3. 頭に手を当てて考え込み、質問を思いつく

ここでは頭を上げる前に一旦頭を下げる予備動作が入っている。閉じた目を開くことで質問を思いついたことを表現し、手を開いてガンマモンを見る。退屈になりがちな会話シーンをやや芝居がかったポーズで彩る。

4. 的はずれな回答にがっかりする

がっくりと脱力する前に緊張のポーズ(ここの手の描き方が非常に直井正博っぽい)が入っていて、落差を強調している。

5. ドアに向かって歩きながら手を広げ頭に手を当てベッドを指差す

斜め上から足まで全身映して歩行しながらの芝居。めちゃくちゃ大変なことしてる。

6. 呆れて立ち去る友人を追う

肩をすくめた後、背を向けながらお好きにどうぞとばかりに右手を出す。それを追う瑠璃は最初の2歩だけ速くてその後普通の歩行のリズムになる。友人を追いかけるというシチュエーションに合った細やかな工夫。

作風

1枚の絵だけで状況や感情を表現できるようなポーズを描く能力に優れており、そのような絵をシンプルな中割りでつないで動かしている。予備動作やフォロースルーをあまり描かないという点で今の流行とは違っているが、ポーズ重視ならむしろ余計な動きは省いたほうがいいのかもしれない。

明らかにセリフの内容を意識した芝居になっているが、完成映像ではセリフとそこまでシンクロしてはいない。さすがそこまでやるのはテレビアニメだと厳しいのかな。でも止め絵口パクよりははるかに表現力があってアニメを見ている気分になる。

デジモンゴーストゲーム

一貫して「怪奇」を中心にした物語になっていて、キャラクターや世界観が前面に出てこないのが特徴。そろそろ大まかな目標とか提示されそうだけど。

参加メンバーについて

  • 舘直樹
    • アクションが相当上手い人だが今のところ作画監督ばかりやっている。
  • 志田直俊
    • 1コマ作画、細かく粘り気のあるエフェクト、極端なパースとカメラワークが特徴の東映のエースアニメーター。
  • 八島善孝
    • 直井正博と同じくニチアサ一人原画の巨人。実は煙や爆発がちょっと上手い。
  • 地岡公俊
    • カットを細かく割ったアクションの演出が非常に上手い。監督よりは各話演出やってほしい人。
  • 池田洋子
    • 知る範囲だと山内重保の系譜を感じる表現主義的なコンテを描く人だけど、サンプル数が少ない。
  • 中村明博
    • ワールドトリガー3人衆(ワールドトリガーで本郷みつるによって育成されデビューした唐澤和也・川崎芳樹・中村明博)の1人。
  • 鎌谷悠
    • Goプリ5話で鮮烈なデビューを飾って話題になった。その後はあまり見てないが『魔女見習いをさがして』で忙しかったんだろうか
      • 東映の演出助手が演出デビューする回は大抵かなりゴージャスな出来になる。演出助手として採用されるのは学生時代にすごいのを作っていた人間ばかりだし、デビュー回はご祝儀的な意味でリソースを潤沢に使わせてもらえるから。

· 14 min read

気持ちのいい娯楽作品だった。あまり議論になるような点はないと思うがポツポツと書いていく。

脚本

AI+ミュージカル+青春群像劇みたいな作品なのかな。吉浦監督はインタビューで「群像劇」と述べているが、ゴッちゃん・アヤ・サンダーの課題は起承転結で言う承の部分で解決して後半はシオン・サトミ・トウマの現在と過去のドラマに焦点が当たる。

AIのある世界観

AIのある世界観の描写に吉浦監督ならではのこだわりが見える。目覚まし時計やガスコンロなどの各機器が音声認識を内蔵しているが、住宅全体としては普通の(というかやや古い)日本の一軒家の外観を保っている。田植えもわざわざ人形のロボットが腰を傷めそうな姿勢でやっているし、自動運転も普通のバスにAI運転手が乗っているだけ。AIありきで最適化された世界ではなく、現代日本の生活に少しずつAIが浸透しつつあるという微妙な時代の世界を丁寧に描写している。吉浦監督のインタビューによると「実際にありそうだなと思わせる」ことを狙っているとのこと。

ミュージカルの浮きと勢い

ミュージカルシーンはあまりハマってなかったと思う。音楽と映像のパワーで(面倒な描写の積み重ねをスキップして)押し通すのは映画として悪いことだとは思わないけれど、シオンが歌うことに対して十分な理由が提示されていなかった。サトミが『ムーンプリンセス』を好きだから(1000回以上見てるの笑う)というだけ。

過去のトウマがシオンに音声による会話機能を与えたのが進化のきっかけとされているが、そこをさらに深めて「歌う」ことがAIという存在にとってどういう意味を持つのかというところまで提示できていればもっと良かった。

歌はまあまあ。ミュージカル演出もまあまあ。やっぱり『竜とそばかすの姫』以後の作品なので比べてしまう。正確ではあるが上手くはないといういかにもAIらしい歌声だった。

トウマの造形

技術オタクの三白眼キャラがヒロインと結ばれる立場なのは意外だった。予告動画からは想定外だった。でも小学3年生当時(CV.藤原夏海)の方がかわいかったよね。人間は誰でもそうだと思うけど…。

トウマがシオンの正体を知ったときに、AIに通じやすそうな順序立てた喋り方をしていた。コンピュータに触れ続けている人間だからコンピュータに理解しやすい話し方が直感的にわかるのだろう。現実の音声認識の研究でも、研究者がテストを繰り返すうちに認識されやすい喋り方を身に着けてしまうという話を聞いたことがあったので面白かった。

星間エレクトロニクス城下町の学校

高校の生徒の大部分が同じ会社の関係者の子供という設定はありがち(その割に例が思い浮かばないが…)。親の会社での身分が子供の人間関係に影響してきたりもするやつ。実際シオンが親の部署を聞かれるシーンがあった。

子供が親の機密情報を盗み出す展開が3度あった。ソーシャルエンジニアリング(情報通信技術を使わずに情報を盗み出すことを指すセキュリティ用語)だ。

  • サトミが美津子のアカウントにログインしてシオンの実地試験の予定を盗み見る
  • トウマの部活の仲間が星間の何らかの書類(人工衛星だったか?)を盗み出す
  • アヤが父親の社員証を盗み出す

このうち、サトミとアヤの親は子供に関わるパスワードを設定している。物語を回すための仕掛けではあるのだが、AIが浸透した世界でも親子の情は大きいんだよという主張なのかもしれない。サトミの朝のルーティンは最初と最後に2回描かれるが、1回目で美津子の仕事上の功績を示す賞状などが映っていたカットで、2回目はサトミと美津子のデートの写真(と思い出のたまごっち)が加えられていた。そこはこの作品の大事な差分ということなのだろう。

親子関係と言えば、サトミの父親はどこかで出てくるのかと思ったら回想の中で離婚シーンが描かれただけだった。美津子はだいぶひどい働き方をしているので離婚は仕方なさそう。しかしよくこの母親に娘を任せようと思ったな…。失脚したときの酔い方がすごかった。

シオンの2回の大脱出

シオンは2回の大脱出を経験している。1度目はたまごっちから消されそうになったときにインターネットに。2度目は暴走したAIとして消去されそうになったときに人工衛星に。インターネットに逃げのびるというのは『ソードアート・オンライン』の茅場晶彦や、あるいは『マトリックス リローデッド』のエグザイルのようだし、人工衛星に意識を移すというのは『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』のタチコマのようだ。視聴中は2度目も衛星通信でインターネットに逃げるのかなと思っていたのだけど、どうやら人工衛星に留まっているらしい。

この2つの逃げ方が別々に描かれているというのは興味深いところで、つまりこの作品ではインターネットは逃げ場ではあるけど、お尋ね者が潜伏できる場所ではないと考えていることになる。『マトリックス リローデッド』(2003)や『ソードアート・オンライン』(原作は2009)の時代はまだインターネットは潜伏場所になりえたが、2021年現在だとそうは描かれないというのは興味深い。インターネットの果たす役割が大きくなり、それにつれて清浄化も求められるという現実の流れと軌を一にしているように感じる。

笑い男

リアルタイムで全ての監視カメラの映像を書き換えるの、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の笑い男だった。ここの見せ方はややこしくて、サトミや一般生徒がスマホのAI操作用アプリを通してシオンを見るとAIであることが表示されるのだが、トウマがスマホでシオンを見るとシオンは消えている。トウマは監視カメラをハッキングした映像をスマホで見ているからだ。視聴中に混乱した。

監視カメラ映像の書き換えはセキュリティAIに極力してもらっているという話だったと思う。AI同士の協力というのも大きいテーマになりうる切り口だったと思うが、劇中ではトウマが驚いていただけであまり活かされなかった。星間のビル内でミュージカルを発生させて周囲のAIも参加させていたのは一応この延長線上の話なのかな?

部室の立地・部室

学校が管理の象徴だとすれば、部室は聖域だ。電子工作部の部室はその性質を強調するかのように屋上に隔離され、実際にハッキング・気密漏洩・喫煙の現場になっている。校舎から隔離された場所にある部室という点では『BEASTERS』の園芸部部室を思い出す。ここでは隔離されたロケーションを利用してハルがいろいろな相手と関係を持っていることが示唆される。

劇中劇『ムーンプリンセス』

『ムーンプリンセス』はディズニーのようなテイストの作品。それを「幸せ」と思い込むシオンがいろいろなトラブルを巻き起こし、周りの人間が右往左往する様子はディズニーの定型的なストーリーを皮肉っているようにも見える。が、別にそういう意図ではなく、ミュージカル的な演出の中で王子様に愛を告げられるシーンは肯定的に描かれている。あくまで日常の現実的視点から茶化す程度。

小学生の頃からずっと同じアニメを愛好して1000回以上見ているというところに精神医学的な含意を読みとることもできるかもしれない。嗜好が固定化した大人ならまだしも、小学校から高校にかけてずっと1つのアニメを見続けるってちょっと普通じゃない気がする。サトミが美津子の仕事を成功させるためにあそこまで必死になるのもちょっと普通ではない。

以下過剰な深読み

美津子が家庭を顧みない労働でサトミの父親と離婚して以降、サトミは辛い現実から目を背けるために家族が幸せだった時代の記憶として『ムーンプリンセス』をリピートするようになった。さらに家庭を壊した母親を正当化するために母親の仕事を応援するようになり、その延長線上でシオンの正体隠匿にも協力したということではないか。

まあ、実際作っている方はこう考えてはいないだろう。もしこの解釈が正しいのなら、シオンとの別れは過去との決別を意味することになり、2回目のサトミの朝のルーティンの目覚ましは『ムーンプリンセス』ではなくなっているはずだからだ。このアニメは『ムーンプリンセス』をそういうマイナスな意味では使っていない。

作画

全編にわたってかなり質が高く、よくコントロールされていたと思う。JCSTAFFの高い制作管理能力が伺える。

· 32 min read

テキトーです

新番

さんかく窓の外側は夜

すごい正直にホモですごい。

大正オトメ御伽話

長い時間を過ごすことで自然と愛情が生まれてくるという話なのかな。そういうのは好き。2話の作画がいいと思ったら原画4人の少数精鋭だった。今後の制作体制にも期待。

先輩がうざい後輩の話

タイトルが具体的で長いのでツイッターでウケそうなつまんねえ話を1クール見せられるのかなと警戒していたが、1話を見る感じ言うほどうざくなかった。作画は良い。撮影も結構良い。ソフトフォーカスみたいな処理なのかな。空気を感じる。色もとげとげしくなくて見やすい。

OPすごい。Aメロ後半、OLでつないでいくあたりのスピード感が良い。PAN→FIX→CG背動→広角で背動?という変化がついているのも良い。技術の進歩でアニメの文脈でありながら実写っぽい表現もどんどんできるようになっていて、歴史的な意義もありそう。サビ、長尺のダンス作画に細かく撮影が乗ってて豪華。2回目の長尺ダンスが謎に左折から始まるの好き。

撮影盛りまくると線で表現されるフォルムの魅力が失われることもあるんだけど、上手くいってるアニメは何が違うんだろうね。

古見さんは、コミュ症です。

障碍で苦労する様子をギャグにするアニメなので、「え、それは一線超えてない?」と思う場面もあるんだけど、高校生の未熟さゆえに距離感を間違いながらも相手を理解したいと真摯に思う気持ちはそれはそれでアニメだなあと。一般論から外れた特殊を描くのがフィクションの力だし。

そうは言っても、ストーリー中の課題の設定があまりにも「学校」の文化を前提としていて、それはそれであんまり乗れないというのもある。そういうのは中学生が見てればいいんだよ。

がんばれ同期ちゃん

準僧侶みたいな話。2話、枚数じっくり使って丁寧な芝居。

見える子ちゃん

退屈。一発ネタで1クールアニメ作るのは無理だろ。お色気で埋めてるのも虚無。バケモンのビジュアルは結構すごい。

月とライカと吸血姫

現実の歴史をベースにしているので説明にリソースを割かなくても世界観の細部が感じられて良い。未熟で一途なキャラの内山昂輝は良い。

吸血鬼すぐ死ぬ

特に面白いところはない。全員躁病みたいなアニメ。OPは良い。

最果てのパラディン

良さそうな雰囲気を出しているが、2話時点でまだ主人公の行動目標がない。方向性を示さずに世界観をじっくり見せるのは良く言えば丁寧だが、悪く言えばトロい。作画や演出で際立った魅力を出せてるわけでもないし、自信がありすぎる。

プラチナエンド

特に面白いところはない。絵は美麗かな。黄瀬和哉の出現が予告されている。

プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~

特に面白いところはない。1話アバンに試合・ライブ(!?)シーンがあるがどちらも出来は普通。ホッケーアニメなのに1話Aパートでまず手芸→温泉→イチゴ食べながら雑談を見せる構成、挑戦的。練習中にマスクを被って区別できなくなったキャラクターたちが並んでいるビジュアルめちゃ好き。

真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました

この手のタイトルから想像できる通りテキトーなストーリーなんだけど、作画や演出は真面目に作られている。2話にいきなり出てきた女はなんだこいつ感がまだあるけど。

MUTEKING THE Dancing HERO

特に面白いところはない。どこを面白いと思って作っているのかもわからない。いつも通りのタツノコの墓荒らし。

境界戦機

大貫健一・久壽米木信弥・有澤寛でビジュアル的には大体ビルドファイターズ。侵略された日本のイメージ映像が平等院とか金閣とかで面白かった。占領軍全員日本語喋ってる。ロボ周りで特に面白いところはない。日本が複数の勢力に分割統治されているという設定はちょっと興味深い。日本と敵対勢力の対立だと勝ち目がないけど、敵勢力が複数あるとその間で上手く立ち回る余地があるかなと思った。UCみたいな。

ヴィジュアルプリズン

美麗なダイナミックコード?

でーじミーツガール

絵の雰囲気は良いが短すぎてそれ以上の感想はない。がまがま水族館のスピリッツはここで生き続けていた。

takt op.Destiny

作画良い。OPのサビ、浮遊感ある入りも上手いが、そこから前並武志の枚数少ない作画への対比が気持ちいい。枚数の少なさがリズム感を生み出していて、OP曲やこのアニメ自体のテーマとも関連が感じられる(つまり、ムジカートの戦いというのはそれ自体が音楽なのではないか、ということですね)。

音楽の擬人化とか、音楽を演奏すると襲ってくる怪物とか、結構めちゃくちゃな世界観。ゲーム原作だからゲームシステムに合わせてアニメを作るとこうなるんだろうけど、1話で野暮な説明を少なくして良い作画で派手にドンパチしてたのし〜〜〜〜と思わせたのは正しい。このアニメに限ったことではないが、1話の時点で視聴者は世界やキャラクターへの思い入れなど持っていないのだから、そういうドラマをやるのは間違っている。作画・音楽で引き込むべき。

SELECTION PROJECT

1話で負けた美山鈴音が実は1話限りのゲストキャラで本当に負けて退場したら面白いなと思ったけどそういうわけではなかった。基本的に顔のいい女を大量に横に並べるだけのアニメなのでそんなに感想はない。伝説のアイドルの妹と心臓の継承者みたいな話、どこかで見たような。メインキャラではない両親の芝居の作画がやたらと上手くて笑った。『かげきしょうじょ!!』の畳職人爺みたいな。ダンスCGは良く出来てるけど特筆するほどでもないか。

ブルーピリオド

PV見た感じ画面が地味で、漫画の忠実なトランスレーションしかやらない気なのかなと思ったが、1話を見ると結構音響周りで凝ったことをしていていいなと思った。原作が人気らしいので話は特に不安はない。藝大は無茶やろwとは思うけど。

サクガン

事前情報ではかなり期待していたが1話でいきなり親子のウェットな話をやり始めて、それ以前にお前ら誰だよ!!!と思ってしまった。そういう話は3話くらいでやればいいのに。

シキザクラ

東海地方の企業で作ったとの事前情報で警戒していたが、予想を遥かに上回る出来だった。CGの芝居がかなり丁寧。長回しのアクションもある。声優もローカル俳優を起用しているが上手い。

OP演出ヨツベ氏。さすがに上手い。サビの実時間変身は画面の奥行き方向をフルに使ったアクションで見応えがある。音楽とのシンクロも良。ところどころに手描きらしいエフェクトが入っているのも面白い(CGのスーツが飛び出してくるアニメーションに金田光が乗ってるのかなり面白い)。

世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する

シルバーリンク異世界転生の系譜。安心のブランド。1話で前世のハードボイルドな描写をじっくりやったのは珍しい。2話、ショタが裸で変なポーズをする結構長めの真面目なシーンがあって笑った。Yes・ショタ乳首。その後の展開は割と『無職転生』をなぞっている感じで、あれが偉大な先駆者だということは理解できたが、無職転生と同じクールに無職転生よりは劣る作画でこれをアニメ化してどうすんの。アニメは基本的にそれぞれ独立して作られているけど、それでも同期のアニメには不思議な縁のようなものが自然と発生してくる。大量視聴の数少ないメリットは、そういうものを感じられることだね。

しょうたいむ!~歌のお姉さんだってしたい

僧侶A。まさかの僧侶2本体制(これまでもなんここやエタニティなどと合わせてアダルトアニメ2本体制はあったが)。ヘテロセクシャルアニメ。子供をダシにしたエロという切り口は『パパだって、したい』と似ている。『うらみちお兄さん』の次にこれが来るのも面白い。

魔王イブロギアに身を捧げよ

僧侶B。男性同性愛アニメ。そして僧侶にも異世界転生の波。世界観がよくわからないので濡れ場に突入する流れもよくわからない。堀江瞬の発音の悪さ、良いよね…

メガトン級ムサシ

レベルファイブ謹製深夜アニメ。ガキンチョアニメの文法とあまり変わらない。1話喧嘩シーンの作画が良かった。キャラ作画もそこそこ美麗。CGもハイレベル。でも面白くない。文法に慣れる必要がある。

180秒で君の耳を幸せにできるか?

ASMRアニメ。時流を捉えているという意味で歴史的意義はあるかもしれない。ヘッドホンで視聴してます。コンセプトは明確。面白くはない。

進化の実~知らないうちに勝ち組人生~

今期のジャンクアニメ枠。惨めな人間が異世界に飛ばされて幸運続きで大出世〜〜という話。2話時点で見た目も声も快とはほど遠いキャラクター2人のやりとりを延々と見せられていてつらい。一応主人公にはポジティブ思考というキャラ付けがなされているらしいのでそのあたりに注目してみよう。

テスラノート

西田征史なのでちょい期待しているが特に面白いところはない。草のCGが異様に細かくて面白かった。エクスアームほど「すごく」ないし。

王様ランキング

web広告で頻繁に見ていたタイトルなのでその時点でかなりマイナス印象だった。1話を見ると思ったよりちゃんとしたアニメっぽい。作画は良い。OPも良い。King Gnuはやはり凡百のアニソンとは格が違う。アニソンに人気アーティストが起用されて、技巧的なサウンドとキャッチーなメロディが危ういバランスで成立しているというのは東京リベンジャーズと似ている。古見さんvs王様ランキングvsちいかわ。

逆転世界ノ電池少女

お気楽系枠で期待していたいが、メタセリフが多くてだいぶ格落ちした。真面目にやれ。あまり面白くなかった。

Deep Insanity THE LOST CHILD

クライアントの注文を丁寧に再現して大真面目に作って、その結果全然面白くないアニメができるやつ。ゲームのチュートリアルみたいな描写が多すぎる。アニメを面白くすることを正面から考えられていない。

マブラヴ オルタネイティヴ

1話は戦記ものとして緊迫感がありだいぶ好きだったが、これはプロローグで2話以降は学園モノにフォーカスしていくのかな。人類滅亡とかキモい敵とかそういうのは好きなので、硬派に推移していってくれることを期待。

キミとフィットボクシング

短さは美点。いわゆる「アニメ」とは全く違う作り方をしているのに、「アニメ」由来と思しき集中線QTUみたいな演出が(敢えて浮くように)盛り込まれていてその点では面白いが、別に新鮮というわけではない。苦しまずに視聴本数を積み増せるところが一番好き。

デジモンゴーストゲーム

デジモンの懐古狙いじゃない方。デジモンは長寿というよりはゾンビというべきコンテンツで、懐古向けコンテンツで稼いだ金を全然ウケないオリジナル新作に投げ捨てている。

今作のテーマはホラー。デジモンでホラーと言われて思い出すのはクロスウォーズ70話『ドキドキ恐怖体験! 心霊ハンターが吠える!!』だが、貝澤幸男の姿は今のところ見えない。地岡公俊も監督よりは演出やったほうがいい。OP演出は角銅博之でホラー映画のオマージュを大量に散りばめているらしいが、全然知らない。出来はまあまあ。EDはキャラデザの1枚絵のスライドだけどもうちょっと頑張って作れよと思った。

作画では『:』からの続投組(大西亮・長田信博・芳山優・篠塚超など)でシリーズ最高レベルのメンバーが期待できそう。東映もやればできる。若手だけではなく、2話では大ベテランの直井正博がいい芝居を描いていた。

ホログラムが一般化した世界で、現実世界に不思議なものが出現していても誰も驚かない。それがデジモンを連れ歩いても目立たない仕掛けになっているが、それ以上に「理解できないものが当たり前にそこにある」というホラーと親和性が高い設定でもある。

主人公の天ノ河宙は中学1年生の少年。母親が海外にいて、父親がデジモン絡みで失踪し、中学校の寮で暮らしているというのが歴代でも特徴的だ。デジモンは家族との関係を大事にする伝統があるが、1話時点で家族がデジモン関係者と確定しているのは珍しい(アプモンがそうだっけ?)。寮生活をしているというのは、主人公がどこにでもいる普通の子というよりは、むしろある程度大人びていて生活能力があることを意味している(ホラーの舞台として都合が良いというのもあるだろう)。2話ではガンマモンの世話を焼く様子が描かれていた。

アプモンが面白くなかったのでデジモンの新作にはあまり期待が持てていないけど、それでも長年好きで見てきたシリーズだ。面白くなればうれしい。

ビルディバイド -#000000-

カードゲームアニメ。絵の雰囲気は良い。1話で長々と(本当に長い)カードゲームのルール説明をやっていてこれも自信過剰なアニメ。アニメを面白くすることを目標に据えていないことがわかる。

チキップダンサーズ

ゆるい絵柄に安心・信頼のラレコのアニメーション。そこに大人気声優花江夏樹の声。と来ればナウなヤングに大流行しそうなものだが、まあいかんせんパンチが足りない。モルカーにはなれなそう。

海賊王女

中澤一登が豪華スタッフをかき集めて『明日のナージャ』のリメイクを作っているという感じ。中澤一登のキャラクターデザインはまだまだ古びない。話は思ってたよりだいぶ緩い感じで面食らったが、これはこれで良い。「男が女が」みたいなイマドキ流行らない価値観がちょくちょく出てくるのが面白い。ネトフリアニメならやらなかっただろうけどFODアニメだとこうなるのね。

ぐんまちゃん

「制作・著作 群馬県」。本郷みつるの本領発揮。『ワールドトリガー』や『本好きの下剋上』では原作を堅守する作風が地味に感じられたが、本作ではアニメならではの自由な空気の操作が発揮されていてとても見やすい。『ワールドトリガー』で育てた片腕の川崎芳樹もしっかり参加している。作画も良い。ぐんまちゃん(群馬)vsシキザクラ(愛知)vsやくも(岐阜)vsゆゆゆ(香川)

1話未見

  • ルパン三世 PART6
  • ワッチャプリマジ!
  • 闘神機ジーズフレーム

継続

サザエさん

力の雪室・技の城山・会社員描写のスギ

ポケットモンスター(2019)

大きなアップダウンなく続いている。最近だと83話『お星さまになったピィ』、75話『クレセリア 真夏の夜の光』が良かった。たまに高木啓明が来てるがあまり存在感を出せていない。

のりものまん モービルランドのカークン

ちょくちょく作画来る。

どすこい すしずもう

デフォルメが効いたキッズ向けネタアニメに見えるが、実のところ結構よくできた能力バトルアニメ。相撲のルールでは無敵に見える飛行能力や、明らかに殺傷力が過剰なニードル刺突、自律行動して噛み付くしらすファンネルなどがある世界で、何の特殊能力もないおおとろやまが5戦5勝なのはさすが横綱。巨体のふぐのさとは本来相撲では有利なはずが能力の力不足で3戦1勝にとどまっているので。

ミュークルドリーミー みっくす!

1期の中盤以降減速して特に誰も何も成長しないまま終了し、2期も山なしオチなしで続行している。4話に1回程度実写の特番が入る。でもアッキーは良いショタ。最初は喋り方の癖が気になっていたが今は好き。アッキーの脇空き猫耳マントコスチューム、異様でしょ。

白い砂のアクアトープ

1クール目でがまがまが閉館して、2クール目はティンガーラで働くという話。老朽化した水族館では魚たちを守れないと気づいて閉館を受け入れる1クール目のエンディングは納得感があったが(ここが面白くなかったらそもそも企画立たない)、それ以外何もなかった。キャラクターをたくさん出して申し訳程度の過去エピソードも紹介してたりするが、それぞれのキャラクターがどこに至りたいかというのがない。くくるの会社員としての成長はこのアニメのエンディングたりうるのか?

宮沢風花の謎挙動も相当面白い。なんとなくフラフラしてるだけだよね。実家に帰ると思いきや帰らない→ちょっと話してやっぱり帰るとか、海岸でくくると感動の再開と思いきや単に飛行機が遅れて着任が遅れただけとか。いや、そういうなんとなく曖昧な行動を積み重ねているというのが変なリアリティなのかもしれないけどさ…

ジャヒー様はくじけない!

大空直美の声を聞くアニメ。ジャヒ虐すき。

やくならマグカップも 二番窯

女性声優以外全員マスクしてる実写番組毎週笑ってる。

無職転生~異世界行ったら本気だす~

作画良い。ストーリーはまあ、あっちこっちで見たやつってこれが始祖なんだなあって思いながら見てる。

86-エイティシックス-

1期では物語の基礎づくりのために世界観に関する説明的な描写が多く、その内容に不自然さを感じてあまり楽しめなかった。2期ではよりキャラクターにフォーカスしたストーリーテリングになっていて、1期以来の演出の尋常ならざるキレの良さと合わせて満足感がある。違和感を狙って投入された久野美咲もよく機能している。

OP演出山本健。圧倒的に良い。1本の連続した映像作品として、スピード感のコントロールが見事だった。AメロのゆっくりとしたPANから不穏なアオリのFIX・手前に殺到する戦車たち(このOPで初の奥行き方向の運動)を挟んでBメロでは素早くカットが切り替わっていく対比。サビの前半はカメラワーク・集中線・なびきなどを駆使して映像のスピード感を維持し、そこから急転直下サビの後半では止め絵のPANをオーバーラップでつないでしっとりと見せる。ここでタイトルも出るのがめちゃくちゃカッコよくて、このアニメは派手な戦いの裏にある静かな悲しみこそ伝えたいというメッセージですね。レーナの背を眺めるシンエイのカットで彼岸花の花畑に浮かび上がる暗い線は十字架を背負ったイメージなんだろうか。記号的表現はかなり意識してやっていると思う。山本健本人は「青と赤の対比は原作からある要素なので素直に拾う。声と目。「境界線」とかのキーワードも奇をてらわないで拾う。すべてを素直にやる。」と語っている。

カードファイト!! ヴァンガード overDress

脚本アニメ。映像と噛み合わせて少ない言葉で力強いメッセージを伝えることができる稀有なアニメ。カードゲームの再現シーンも時折だがジェネリック中村豊のような猛烈な作画が繰り出される。どうやら韓国人のメインアニメーター陣が上手いらしい。蒼井翔太も過去のイロモノのイメージを脱して、本当に自分の味を活かしたいい役ができるようになってきた。

ワールドトリガー 3rdシーズン

原作既読者にとっては率直に言って退屈なアニメ。音量大きめのわざとらしいBGMに乗せた間延びした会話を聞いてるとあ〜ワートリだなあと感じる。戦闘シーンの作画繰り出すかな〜〜〜→今回は繰り出さなかったかぁ〜〜〜を繰り返すだけ。たまに大西亮とか来るんだけどね。それだけにOP/EDの良さは視聴意欲に直結するのだが、残念ながら前シーズンと比べて今シーズンは新規作画が少なく物足りない。撮影はゴージャスなのだが…。

鬼滅の刃 無限列車編(テレビ放送版)

前期と同じく自分の感情を説明するセリフや無軌道なギャグも多いし真面目にアニメ作れよと思う。普段は原作付きのアニメなんて誰が脚本やっても同じと言っているが、これを見るとちゃんとトランスレートする人間が必要だなと感じる(脚本: ufotableじゃあないんだよ)。一方で作画と演出は凄まじい。そこに文句言う人はいないでしょう。

終わりに

アニメをたくさん見るのは体に悪い。

· 10 min read

作品に対する総評みたいなやつは別に書くかもしれない。

最高の最悪インターネット描写

インターネット大好きな僕は大部分のネット住人の描写に対して(悪い意味で)「あるある」と感じたので挙げてみる。

母親の死に対するコメント

これはヤフーニュースのコメント欄、通称ヤフコメのUIがモデルになっていた。ヤフコメはインターネット言論空間の中でもかなり治安が悪い方だ。

母親の死のシーンを見たとき、展開の安直さと、素人の危険な無茶という2点で「いかにもネットで叩かれそうなシーンだな」と思ってしまった。しかし細田は僕のこの反応を完全に予期していて、そのものズバリネットで叩かれるシーンが入った。ここでもう「やられた」と思った。

このような無謀な賭けは勇気を讃えられるよりもむしろ「期待値が最大になる選択をしなかったこと」をもって批判されるのが今のネットの空気だ。ちょっと前なら人情を慮った前者の反応が多かっただろうし(本当か?)、創作物の中くらいは甘えて前者のようなコメントを描いたり、あるいは何も描かなかったりすることもできた。だってそもそも赤の他人が母親の行為をどうこうと評価する必要なんかない。「とりあえずなんか言いたい」というのもインターネットの病気だ。

しかし細田は母親の行動にネットで批判が集まり、それをすずが見てしまうところまで含めて物語に組み込んでいる。インターネットがある世界を妥協なく描いている。

ジャスティス

あくまで自警団であり、Voicesに認められた活動ではないという点は自治厨の多い界隈(いわゆる「腐女子の学級会」)を想起させる。

企業にスポンサーされている点に注目すれば、インターネットの自由もカネの力には勝てないという話につながる。それはGAFAだったり、ネットのいたるところに広告を出すめちゃコミやビビッドアーミーだったり、あるいは巨大市場を背景に「間違った」発言を取り締まる中国のvtuberファンたちかもしれない。スポンサーの中にどこかの国の機関とかが混ざってたら面白いなと思ったんだけどさすがにそれはなさそう(羅小黒戦記の2019年上映時は放送前に中国当局チェック済みという表示があったんですよ。冗談ではない)。

ベルをアンベイルしても特に何も起きなかったのを見てスポンサーが次々と離れていくビジュアルは、広告を剥がされた保守速報だ。さらに広くいわゆる「キャンセルカルチャー」の可視化と言ってもいいかもしれない(ただし自治厨の側がそれを食らうというのは面白い)。

アンベイルが個人に対する攻撃という認識が既に全世界に共有されているというのも興味深い。人は自らを偽ったり隠したりしながらインターネットをしている(だから暴かれるとダメージを負う)というのが前提になっている。米山隆一が黒瀬深を開示請求した話を思い出した。

インフルエンサーたち

FOX(野球選手)

自分の辛い過去を告白しながら人々を励ます優等生ムーブ。いかにもアメリカの社会的地位が高い人っぽい。ツイッターとかで翻訳とともに流れてきそうだし、その後で無断転載bot(フォロワーを稼いでからアカウント売買されるやつ)で繰り返しネタにされそう。

彼の告白動画に対するコメントは「感動した!」「立派だ!」みたいな特に単純なものが多くて印象的だった。YouTubeのコメント欄っぽい。

イェリネク(アーティスト)

これはイメージつかない

おばさん(AmazonとUber Eatsの人)

一番ヤバい人タイプの人。日常的に嘘を発信し続け、一部のリテラシーの高い人には嘘つきだと見破られているが堂々とやりつづけることで一定の影響力を獲得している。「自分は被害者である」という形式の発信が効果的であることを利用し、利益を得ている。

竜は大部分のUのコミュニティからは嫌われているが子供の間では人気がある。これは今で言うとひろゆきっぽいと思った。人々が竜の正体について憶測するパートで脱税してる金持ちという候補が上がっていたはずで、ひろゆきも損害賠償請求を踏み倒している。

竜の知人を騙って知名度を稼ぐ配信者たち

有名人の醜聞がニュースになるたびにYouTubeに投稿される「○○の息子です」みたいなやつね。

最悪をきちんと描くからこそ希望も描ける

最終的に細田守は「それでも誰かとつながって救いになれるかもしれない」という希望をネットに見出している。

細田は寓話の人だから直球で「インターネットは」とは作中では言わない。しかしネットについて物語る上で必要な要素はきちんと現実から拾い上げて、強調して作品に取り込んでいる。その目の鋭さに僕は感服した。この2021年に僕が見たかったアニメだった。

ネットで何億ものフォロワーを獲得しても最終的に達成できるのは2人の子供を救うことだけだった。全然釣り合いが取れていない。この困難さを正直に描いているからこそ、細田の抱いた希望は夢物語ではないと感じることができた。

それにしても細田はなんでこんなにネットに詳しいんだろう。ネットの単純化された人格が寓話を描くのに向いているというのはあると思うんだけど。

僕と『竜とそばかすの姫』

僕はインターネットが好きだし嫌いだ。自由や解放、出会いをもたらすはずだったツールは同時に抑圧・負荷・分断を生み出している。そしてそれはコロナ禍においてリアルのコミュニケーションが激減し、人々の不安が増大することで一層顕著になっている。

どうしてこうなってしまったんだ、もっとどうにかならないのか、そんな思いにピタリと寄り添って希望を見せてくれたこの映画は、まさに「自分のために歌ってくれている」と感じた。