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『放課後ていぼう日誌』のOPの好きなところを書いていく

· 6 min read

※本記事内の画像・動画は以下の動画より研究のために引用したものであり、それらの権利は海野高校ていぼう部に帰属します。

イントロ

海、空、そして釣り竿。女の子が釣りをするアニメでありながら、女の子が映らないこの一瞬、図式的なレイアウトを挟んでからタイトルロゴが出るところに趣がある。

Bメロ

静かな港町の風景を3カット連続で映したあと唐突に陽渚がカメラに向かって微笑む。彼女は一体誰に向かって微笑んでいるのだろう。意表を突かれる演出だ。

1~3カット目は完全なFIXなので主観の存在を感じさせない記録のような映像になっているが、4カット目と5カット目にはわずかにハンディブレがついているので、確かに誰か撮影者が存在している。

風景を撮りに行ったカメラマンが現地の女子高生を見かけて咄嗟にいい絵だと思って手持ちカメラで撮影したら、タイミングよく女子高生がこちらに気づいて笑いかけてくれたのだろうか。無茶苦茶を言っているのはわかっているが、そういうストーリーの存在を思い描いてしまうほどにこのシークエンスは特異だと感じた。

サビ前

「遠くには↑ー」という音楽の高まりに合わせてカモメが飛び上がる。釣りのアニメなのにサビの直前でカモメや空を描くのは少し不思議に感じるが、釣りそれ自体よりも海や空(海を見れば空も目に入るので)といった自然の雄大さを見せたいという意図なのだろう。

それは直後のカットからもわかる。

描かれているのは海と空、水平線、陸、雲、船。そしてそれを見ているメインキャラクターたち。釣りはしていない。

サビ後半

ようやく釣りをしている、このOPで一番大事なカット。キャラクターたちは動かないし、魚も少し動いたあと止まってスライドになる。つまり、スライドを見せたいカットだ。

キャラクターは左へ、魚は上へ、互いに垂直にスライドする。陽渚の顔と魚が重なり、そしてまたずれる。

陸と海、違う世界で生きていた2つの生命が釣りを通して接触する。そこに生まれるドラマを描きたいということなのだろう。僕ならこのカットの後半(重なりが解消されるあたりから)は陽渚の顔と魚をアップにして魚をピンぼけにして2つの生命の交錯をもっとドラマティックに表現したくなってしまうが、そうしなかったのは落ち着いた雰囲気の映像で統一したかったのだろう。

魚の動きが止まってからは陽渚の服のなびきと水しぶきのきらめきにだけ動きがつけられているのも面白い。釣るという行為は陽渚と魚の2者だけの世界を形作る。友達と分かち合うものではない。

終わりに

海や自然の雄大さをじっくりと描くことを重視しつつも、Bメロの特異な演出が印象に残るOP。絵コンテは監督の大隈孝晴。これまでも多くの作品でOPを手がけているが、イメージBGを多用してキャラクターの魅力をたっぷり描いていくものが多かった。それと比べるとこの『放課後ていぼう日誌』のOPはほとんどが具体的・写実的な背景で動きが少ない。作風がかなり違う。

初監督ということで自分の作風を押し出しているのか、はたまた原作や楽曲の雰囲気に寄せているのかはわからない。でも僕はこういうのが好きだ。