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『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』を見た

· 5 min read

ネタバレあるよ!

14歳の貴族の娘が探検から帰らなかった祖父の船を探しに行く話。家出した子供が世間の荒波に揉まれながら働く(BGMで時間を飛ばしていくシーンまである)ので実質『天気の子』。

砕氷船の技術レベルがよくわからなかったのでなんで最後がアレでよかったのかよくわかっていない。船は動かせる状態にあったが、船員の反乱のせいで帰れなくなり祖父は死んだということ?だとすればオルキンは人望がなかった(敵が多かったと母親も言っている)一方でサーシャはかろうじて船員たちをまとめ上げることができたという対比が大事なのかしら(プロダクションノートによるとだいたいこれっぽい)。

でもサーシャが強い意志で船員たちを引っ張れたのは祖父を追っていたからであって、つまりサーシャの人格的な資質というよりはむしろ2番目に行ったという状況が成功の要因だったのか?という疑問も生まれてしまう。だがサーシャの成長は意外とちゃんと描かれているのでやっぱり彼女の資質ということでいいのかもしれない。

最初のサーシャは無力で他人任せだ。王子に捜索の再開を頼むが逆に不興を買うし、家出して一人で北へ向かっても祖父の形見(だったよね?)を騙し取られる。しかしそこでサーシャはオルガに与えられた機会を活かして成長し、オルキンのメモという情報やラルソンへの貸し、さらに目的地やノルゲ号のことを調べ上げるという勤勉さを武器にルンドを動かす。この辺りは出来すぎてちょっと違和感もあったが、見終わってから考えるとこれがこの作品のリアリティレベルだったのだろう。偶然祖父の死体とその日記を見つける辺りもそう。高畑勲が「このウソのつき方は気持ちがいい」と評したのもよくわかる。

フランスアニメーションということで意気込んで見に行ったのだが、意外にもジャパニメーション的演出が多かった。特にサーシャとカッチの絡みのラッキースケベや人工呼吸。これは文化普遍的なネタなんだろうか。カッチは推せる。インタビューでは東映動画の影響を認めており、言われてみればキャラクターデザインは『太陽の王子 ホルスの大冒険』にちょっと似てる。背景とキャラクターの画風を統一することで両者がよく馴染んでいたし、井上俊之によるとそれでもキャラクターが埋没しないのはレイアウトの上手さらしい。サーシャが耳飾りを取りに行くシーンはレイアウトが素晴らしかった。

総じて満足。チャレンジして成功するという意外にも正統派な物語だった。