『ミアレジム戦! サトシVSシトロン!!』
脚本:冨岡淳広
絵コンテ:金崎貴臣
演出:関野昌弘
総作画監督:広岡トシヒト
作画監督:西谷泰史、松永香苗
作画監督補佐:一石小百合、中矢利子
原画:黒石崇裕、大橋藍人、杉江敏治、佐藤利幸、西谷泰史ほか
・鮮度を大事に急いで書いたので、咀嚼が不十分あるいは感情的な記述があるかもしれませんがご容赦ください
<脚本>
・サトシの発想、「どうだろうね」
サトシはヌメルゴンにあまごいを使わせた。結果としてこれがエレキフィールドとヌメルゴンの麻痺を解除し、反撃の糸口となったのは脚本の妙だと思うが、さらに素敵だったのはサトシがそれを計算して指示したのではないところだ(まずはフィールドを味方にすると言っているので、その点はある程度計算は合ったのかもしれないが)。「これでお前の好きなフィールドになった!」というのが直後のサトシの台詞である。つまりサトシは戦いのクライマックスにおいてヌメラとの出会いを回想し、そこから着想を得てヌメルゴンが戦いやすくなるようにあまごいを使わせたのだ。やや駆け足ではあったものの、サトシとヌメルゴンが築いてきた絆が勝利を手繰り寄せたと言っていいと思う。それにしても、リモーネの「どうだろうね」が何ともいい味を出しているではないか。
・「サトシが勝った」
なんだかんだでサトシの応援になっちゃってませんか?まあいいけど。
・一緒は当たり前
今後のメンバーどうなるんでしょ。ショータ君が次のライバルなのか?しかも予告にはアランもいるし!?
<演出>
・人間の描写
子供がモンスターを使役して戦わせる作品は多いが、子供が棒立ちで何もしないことが絵的にも物語的にも問題になる。例えばデジモンシリーズでは、子供の精神的成長によってデジモンが進化を獲得するという設定によってこれらの問題を解決しようとした。加えて『デジモンテイマーズ』ではカードスラッシュによって子供が戦いに介入するシステムが考案され(小中千昭氏の個人サイト http://www.konaka.com/alice6/tamers/plan.html より)、『デジモンフロンティア』ではついに子供たち自らがデジモンになって戦うという設定が導入された。ポケモンシリーズではゲームとのすり合わせ上大胆な設定は無いが、例えばポケモンを捕まえる時に力でねじ伏せるだけでなく心を通わせる描写を入れたり、戦闘で傷ついてたポケモンに必ず一声かけてからボールにしまうなど、ポケモンとトレーナーの絆は重視しているようだ。最近ではメガ進化という要素も出てきており、今後のアニメポケモンにおけるトレーナーの役割の変化に注目したい。
・ 再現、目
サトシとシトロンが1話のバトルを再現しているところ、二人(とポケモンたち)の目が映されることが多く、互いにあの時の再現をしていることを認識しているように見える。戦いの中で通じ合うものがあるというのは、燃える。ましてこれまで長く苦楽を共にしてきた二人であればその感動はひとしおだ。
・水滴
あまごいの最初の一滴を純粋に嬉しそうな顔で受け止めるヌメルゴンのカットは、ある意味この回で最もエモーショナルな箇所と言ってもいいだろう。急激にBGMを止めるものだからここから「ゲッタバンバン」が流れ出すのかと思ったが、そうではなかった。
<作画>
・西谷泰史さん
予告がちょっと話題になってるようなので…
来週のポケモンxyは自分はアクションパート全部、フィールド内メインで作画監督をしております。ポケモン達が大ハッスルしてるのでよろしくです。
・大橋藍人さん
(・ω・)さて、終わったかな
今回のアニポケはAパートのりゅうのはどう~Bパートのエレザードの3Dの回り込み、間少し開けてサトシのボール投げ~ルチャがからてチョップ当てて決めポーズ取るトコまででした
途中の観客席とからてチョップの指示出しは別の方です
大橋さんは最近注目しているアニメーターの一人。情報量の操作がとてもうまいという印象がある。主にエフェクトでは非常に簡素かつ幾何学的な線を用いるが、速い動きではタッチやオバケ、影・ハイライトで情報量をぐんと増やしたり、まだうまく言葉にできる段階ではないが、そういう調整によって 目に残る絵の印象を操作している印象がある。それと大きな動きの前のタメの絵の選択が非常にうまく、バウンドするような自然なテンポ感のある動きを作れる。今回で言えば12分24秒当たりのエレザードの走りだしの箇所にその特徴が顕著。また、シトロンを上から見下ろすカットでは頭の大きさがわずかに強調され、カメラの存在とともに臨場感を高めている。
・CG背動
ポケモンシリーズの映像面において非常に特徴的なのは3DCGによる背景動画(以下CG背動)である。キャラクターが戦っている場所をCGでモデリングすることによってカメラワークの自由度を飛躍的に高めている。アニメーターが先にラフを出しているのか、それともCG背景に合わせてアニメーターが描いているのか、それは視聴者の立場から知ることはできないが、どちらにせよ驚くほどのマッチングを見せている。これまでであれば技のバンクの背景は抽象的なもの(いわゆる謎空間)だったが、CG背動ならカメラワークの情報を乗せれば簡単に背景と合成できる。これによってXYから謎空間を利用したバンクは無くなったように思う。今回も非常に多くの箇所で当たり前のようにCG背動が活用されている。すごい。
・OPマイナーチェンジの予感
OPに仕込まれていた多くの要素が67話ですでに回収されてしまった。具体的には
①サビ直前、ジムリーダー3人+シトロンのうちフクジとシトロン
②サビのサトシのポケモンのうち、ヌメールはすでにヌメルゴンになった
③ヌメラが進化していくカットも同様に、すでにヌメルゴンになってしまった
④サトシとシトロンの対戦
これらの要素はこのままOPに残しておくのはおかしい。よってそろそろOP映像のマイナーチェンジが来るのではないかと思う。同様に、EDについてもフォッコが未進化のまま残っているが、これも変わるだろう。というか次回から変わるはず。
・破片の輪郭
これは撮影レベルの問題なのかと思うが、えぐれた地面や飛び散る破片の輪郭の発色がきれいなので、情報量が多く感じられる。
・頬タッチの入れ方
頬が赤く染まっていることを漫画的に表現する赤線のタッチのコトを言いたい。頬タッチがごく小さく、控えめに用いられているのがこの話数の特徴。
・崩しユリーカ
数回見られた。かわいい。
・エレキフィールドの描線
レントラーがエレキフィールドを発動した時のほとばしる描線は迫力十分。整ったアニメの線にはない魅力が良く表現されていたと思う。
・細かい煙
今回、煙細かいよね?ポケモンシリーズは地味に煙や爆発の作画にこだわってる。もしかしたらバンクもあるかも。
<声・音>
・ 「アドリブです」
計算されたバトルもシトロンの持ち味ではあるが、それをかなぐり捨てて全力で目の前の相手と向かい合うと宣言するこのセリフも素晴らしい。その後の「もうすぐ終わってしまう」は胸にこみ上げてくるものがありながらも全力で目の前の戦いを楽しんでいることを感じさせる素晴らしい演技だった。そこに重なるシトロンの目がうるんでいるのも良い。「楽しい時間の終わりを予期した寂しさ」という複雑な感情を絵と声の両面から見事に表現した。
・ゲッタバンバン
いまだにフルで聞いたことが無いのだが、イントロはハ長調でかつカノン進行。冒頭が主和音なのでいきなり開放的で疾走感がある。すでに戦いの高揚感の中にいることの表現として合っているがやや軽いか。イントロからAメロに行くところ、急激にロ長調に変化するのがすごいし、これをまたハ長調に引き上げるサビ直前の流れも不思議。しかしOP曲が挿入歌として使われるという盛り上がりに比べて絵的に地味だった感は否めない。もちろんここでサトシとシトロンの心中をモノローグで語らせるのは重要だっただろうが…。いろいろな要素を統合して、総合的に良いものを作るというのはとても難しいことだ。