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作品賞: 怪物事変
©藍本松/集英社・「怪物事変」製作委員会
- 夏羽(CV:藤原夏海)
- 織(CV:花江夏樹)
- 晶(CV:村瀬歩)
- 野火丸(CV:下野紘)
冗談みたいなキャスト。夏羽(13歳)・織(14歳)・晶(15歳)のメイン3人は密度が高い。少年の成長は速いし3人の性格も違うので、ここに3人詰め込んでもちゃんと違いで物語を作れる。むしろその方がキャラが立つ。
加えて興味深いのは紺の存在だ。夏羽とフラグが立ってるような立ってないような微妙な立ち位置だが、異性との未熟な接し方もまたショタの魅力だ。逆説的だがショタを魅力的に描くためには相手役となる異性が必要になる。
キャラの配置だけではなくエピソードも本格派で、織の母親が文字通りの『産む機械』にされていたり、晶と結が雪女の里に産まれた貴重な男として種馬扱いされていたりと、性を搾取する話が続く。思春期の少年たちの前に立ちふさがる問題として嫌な生臭さと恐ろしさがある。
総評として、ショタへの歪んだ愛情がショタの全てを描きたいという情熱に繋がり、3人ものショタをそれぞれひどい目に遭わせるという作品に昇華されており、今年の作品賞にふさわしい。
キャラクター10選(放送時期順)
クロ(CV:永塚拓馬)―『怪病医ラムネ』
© 阿呆トロ・講談社/「怪病医ラムネ」製作委員会
中学生(中学2年生との情報もあるが確認できなかった。中学入学直後の事件が12話の1年前という言及があるのでたぶん正しい)。怪病の患者としてラムネのもとに通ううちに弟子になった。低身長でかわいくて無愛想だが道場の子なので強い。エッチなことに興味はありませんみたいな顔をしているが、兄が2人いるから知識は十分だろうし、絶対ラムネとはやることやってると思う。
『怪病医ラムネ』はトンチキお悩み解決アニメの名作。「怪病」は「調味料の涙」「竹輪の陰茎」など本当に奇妙なものばかりだが、これらの病気は患者の精神的な問題とリンクしている。怪病やその治療法の表面的なトンチキさを笑っていると、いつの間にか悩みの本質に引き込まれてドラマを体感している。それぞれの症例という横糸に対して縦糸となるラムネとクロの物語もしっかりしている。
近導ユウユ(CV:蒼井翔太)―『カードファイト!! ヴァンガード overDress』
©VANGUARD overDress Character Design ©2021 CLAMP・ST
中学3年生。2クール主人公やってても未だにバックグラウンドが見えてこない謎多きキャラクター。素直でひたむきな性格で周りの人間を動かす。女装はメグミの男装と対を成す重要なファクターかと思っていたがまだよくわからない。学校では一人で浮かない顔をしている。
『カードファイト!! ヴァンガード overDress』は今年の最強級アニメだ。特に優れているのは脚本で、題材、情報の出し方、抽象的表現、セリフ回し、反復と対比、各話のまとまりと全体構成のバランスなど、全てにおいてレベルが高い。演出と脚本の連携も良く、映像で伝わる情報は敢えてセリフにしなかったり、逆に自然とは言えない会話の応酬でも映像とのコンビネーションで成立していたりする。クレジットから脚本に関わっていると思われるスタッフを挙げてみると計6人(シリーズ構成2人、シリーズ構成補佐、シナリオ強力、原作スーパーバイザー、カードファイト構成)もおり、この陣容の厚さが完成度の高さに結びついているのかもしれない。
蒼井翔太は甘く高い声と微妙な演技力という特性から声優としては飛び道具なのだが、脚本にこれだけの強度があると可もなく不可もない声優よりはこういう尖った声優の方が活きる気がする。
作画はメインアニメーターのKANG WonyeongとKIM Youngbumが上手い。
杉山亮仁(CV:藤井ゆきよ)―『ミュークルドリーミー みっくす!』
©2021 SANRIO CO.,LTD. ミュークルドリーミー みっくす製作委員会・テレビ東京
中学1年生。1期終盤に登場し、2期からレギュラー。アメリカ帰りの超天才少年にして、1期のメインキャラの遼仁の弟。いつのまにかアクムーと手を組んでわけがわからないくらいエッチなユニフォームを着てた(このピンポイント脇見せは何?)。その後ゆめに一目惚れしてふにゃふにゃになった。藤井ゆきよの演技は過剰なイントネーションと舌足らずな喋りが特徴的。中学1年生にしてはちょっとウザすぎる喋りなんだけどずっと聞いてると癖になる。
『ミュークルドリーミー みっくす!』は『ミュークルドリーミー』の2年目。特に何も成さずに終わった1年目を受けて、それに輪をかけて何もしていない。情報密度でYouTuberに負けないための節操のない演出が特徴。4週に1回程度虚無の実写番組が入る編成は謎。
双頭院学(CV:村瀬歩)―『美少年探偵団』
©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト
小学5年生。美少年探偵団団長。他のメンバーのように一芸があるわけではないが、強烈な美学で求心力を発揮している。長ズボンショタも良い。
『美少年探偵団』は西尾維新。それぞれの事件は他愛のないもののように見えて実は深く暗いものだし、少年たちもそれぞれの特技で無敵のように見えてそうではない。小説原作ならではのスケールの自在な変化をシャフトが演出力でなんとかしている。
ガロウ·エジル(CV:内村史子)―『チート薬師のスローライフ~異世界に作ろうドラッグストア~』
© ケンノジ/一二三書房,チート薬師製作委員会. All Rights Reserved.
年齢不詳。魔王。レイジのポーションの中毒になり、ノエラに惚れてキリオドラッグの従業員になった。ノエラに「匂いが嫌い」と言われ、それを解消するためにレイジの遺伝子を組み込んだ薬(下品)を飲む。異世界転生・スローライフ・美少女動物園という作品に、レイジの取り巻きに恋するショタが仲間入りするというのは新鮮だ。
『チート薬師のスローライフ~異世界に作ろうドラッグストア~』は異世界転生スローライフの傑作。この種の作品が陥りがちな世界観・能力の描写への偏重を避け、漠然かつ便利な能力を使ってお友達の困りごとを解決していくドタバタコメディで視聴感は『ドラえもん』に近い。EDの演出も懐かしい感じで、今年一番「こういうのでいいんだよ!」と言いたくなる作品だった。
南雲孝士(CV:山田美鈴)―『女神寮の寮母くん。』
©2021Ikumi Hino/女神寮
中学1年生。父親の失踪によって天涯孤独になり、成り行きで大学寮の寮母になる。スケベな事件を繰り返しながら寮生たちと親交を深めていく。なぜか女の乳首が見えるバージョンでも孝士のちんちんは見えない。中学1年生だからギリギリかわいい弟分としての「絵」が成立するけど、1,2年したら関係は変わってしまうよなあ。でもそういうこと(この作品をラブコメとして成立させるために必要なご都合主義)に自ら疑問を持って問いかけていくキャラクターというのは新鮮だった。
孝士くん、私達には言ったことがあったわよねえ。男だからとか、男だからできる仕事とか。そんな風に自分が男であることをちらつかせておいて、いざとなったらみんななかったことにしちゃうの?もしかしたらあなたの今までの思わせぶりな行動であなたを異性として意識している子がいるかもしれないのに。
女神寮は俺がようやく見つけた居場所なんです。だからここ最近、いろいろモヤモヤしたり思うことはあっても考えないようにして、ずっと女神寮に、みんなといたいから気にしないふりをしてきたのに。男女のそういうのとか関係なくただ今を守りたい!ただ嫌われたくないって思うのはダメなことなんですか!
『女神寮の寮母くん。』はトンチキスケベとコスプレイヤーを売り出したい商業的事情が悪魔合体してなぜか佳作になった、めぐり合わせの奇跡のような作品である。各キャラの公式コスプレイヤー(?)によって構成される2.5次元ユニット(??)『女神寮生』が主題歌を歌っている。メインキャラクターの1人がコスプレイヤーという設定であり、作中ではコスプレは「いつもと違う自分になることで自己を解放する」ものと定義されている。実際にコスプレを通して孝士が自己の悩みを吐露する回が中盤の山場になっている。
ここにいるのはいつもと違う自分。今だけ、ここだけ、いつもの自分じゃ言えないことだって言えちゃう。誰にも遠慮する必要なんてない。
ぐんまちゃん(CV:高橋花林)―『ぐんまちゃん』
Copyright© 群馬県 All Rights Reserved.
年齢不詳。子供ではあるようだ。設定上は性別はない。「ぐんま」に生息する謎のクリーチャーで、ぐんまパワーによって人々を洗脳している。世界の全てに対して深くコミットすることがなく、純真さと直観だけで受け答えする。それが本物の「子供らしさ」なのかもしれない。能力を使うときに尻尾が屹立する。
『ぐんまちゃん』は…何なんだろう。群馬県が製作している、群馬県のキャラクターを使ったギャグアニメ(?)だ。群馬県を模した「ぐんま」に生きる人々(ダメな大人たちを多く含む)を天真爛漫なぐんまちゃんの目を通して眺めるという構造は同じ本郷みつる監督の『クレヨンしんちゃん』と似ている。そこにブラックユーモアや風刺、メタ表現をマシマシにしていて、しかもそれを税金で作っているというのがめちゃくちゃ面白い。
監督・脚本を務めた本郷みつる監督の手腕は凄まじい。脚本と絵作りが直列つなぎになっている一般的なアニメの作り方では出てこないような、アニメという表現形式を限界まで使い倒す脚本だった。実体化した「責任感」(考える人のような見た目をしている)にぐんまちゃんが物理的に押しつぶされるとか、実体化した天の声と一緒にぐんまを観光するとか。
天ノ河宙(CV:田村睦心)―『デジモンゴーストゲーム』
© 本郷あきよし・フジテレビ・東映アニメーション
中学1年生。寮生活ショタ。かわいいので先輩にエッチなイタズラされてそう。同級生の頼みごとも断れないし。
あまりキャラクターの内面を描かない作風なので掴みどころがない。小学生の頃は母親が不在で父親が研究に夢中なので家事を担当していたようだ。突然弟になったガンマモンの面倒をよく見ているのはその延長なのだろう。父親の失踪については情報収集はしているもののそれほど必死な様子はない。敵対するデジモンに対して戦って倒す以外の解決法を探すことが多い。こう書くと優しいいい子のように見えるが、目的のために平然と危険に身を投じたり法を犯したりする。実はどこかに根本的なズレがあって、それが今後の展開のキーになったりするのかもしれない。
『デジモンゴーストゲーム』は2021年10月からのニチアサアニメ。デジモンシリーズの伝統と、東映ニチアサスタッフが得意とするホラーを組み合わせている。1クール経過した時点で何がやりたいのかはよくわからない。各話のクオリティは演出家次第。
四谷恭介(CV:花守ゆみり)―『見える子ちゃん』
©泉朝樹・KADOKAWA刊/見える子ちゃん製作委員会
小学5年生。姉のキスマークを確認するために風呂に乱入する剛の者。ホラーを一人で見るのが怖いからと姉を頼ったり、うなされていた姉を起こして「やらしい夢でも見てたの」と質問したり(???)、いわゆる姉弟モノシチュエーション要員でありながら、独自のキャラクター性も発揮していた。
深夜アニメでは視聴者の年齢層が高いのでショタが主役を張ることは少ないが、ある程度強度がある物語をやろうとするとキャラクターの家族を描かないわけにはいかない。ショタの需要はそういうところにもある。
『見える子ちゃん』は「見え」すぎる主人公がいろいろな状況で幽霊を「見ないふり」するというホラー系コメディ。序盤は同じことの繰り返しで退屈に感じたが、中盤以降は自ら確立したパターンに対するずらしや崩しがあり楽しめた。自ら積み上げた作品世界をフル活用して面白さに転化していく構成はテレビアニメの鑑だ。
恵(CV:佐藤健)―『竜とそばかすの姫』
©️2021 スタジオ地図
14歳。父親に虐待され、Uの世界では竜として暴れまわっている。今回は高校生の女の子が主人公と言い張った細田守が案の定繰り出してきた伏兵。
Uで妙に優しくしてくれて胸まで押し付けてくれたお姉さんといざ生身でビデオ通話してみると後ろに彼氏ヅラした高身長イケメンが立っていたわけで、そのときの彼の心情を想像すると笑ってしまう。ラストで生身で抱き合ったときもそのことを考えていたんだろうか。pixivで調べるとそういう切り口の二次創作はちゃんと存在していたので、みんな気になってたらしい。
『竜とそばかすの姫』は細田守の最高傑作にして最大の問題作。めちゃくちゃな作品なんだけど、たぶんもうありきたりな批判なんか気にしてないんだと思う。沼田友さんのレビューがおすすめ。
その他一言コメント
ロイド(CV:花守ゆみり)―『たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語』
実はムキムキ
ルーデウス・グレイラット(CV:内山夕実)―『無職転生 ~異世界行ったら本気だす』
これはなぁ〜ショタじゃないよなあ。というか10歳であの長さの陰毛ってかなり早いしもしかして1年が365日より長いですか?
甲斐ミナト(CV:山谷祥生)―『プレイタの傷』
序盤で拉致されてずっと敵とおしゃべりしてた。
知念実也(CV:永塚拓馬)―『SK∞ エスケーエイト』
女性向け美少年アニメでのショタ枠。こういう場合身長や声は成人寄りに設定しながら性格を差別化のために幼めに寄せることが多い。そういうのはあんまり好きじゃない。
劉昴星(CV:藤原夏海)―『真・中華一番!』
チャーーーーーーハン!ジュチにメイリィを取られそうになって煩悶しながら鍋振ってるシーン。
“飛天大聖”ジュチ(CV:小野大輔)―『真・中華一番!』
悪いやつじゃあないんだよな。EDのジュチは楽しそうに踊りながら料理していて、こちらが彼の本質なんだと思う。
クラっち(CV:船戸ゆり絵)―『マジカパーティ』
ケツのラインがセクシー・・・エロいっ!
足利飆太(CV:矢野奨吾)―『美少年探偵団』
割と性欲出してくる枠。声が良い。
梶田シノブ(CV:東内マリ子)―『カードファイト!! ヴァンガード overDress』
味方を喰らって強くなるモンスターを使い、対戦相手を煽りまくるバッドマナープレイヤー。典型的なクソガキ。でも自分の勝ち方にこだわるという美学もある。
花垣武道(CV:新祐樹)―『東京リベンジャーズ』
過去を変えて現在に戻ったら、一度もセックスを経験しないまま非童貞になりそうでちょっと面白かった
麻中蓬(CV:榎木淳弥)―『SSSS.DYNAZENON』
なかなかないローテンション演技。背が低くてかわいい。話はあんまりパッとしない終わり方だった。
©円谷プロ ©2021 TRIGGER・雨宮哲/「DYNAZENON」製作委員会
知念類(CV:北守さいか)―『白い砂のアクアトープ』
3回くらいちょろっと出てきた気がする。幼いうちから結婚を意識しているショタは良い。大人に対抗心を抱いてやっぱり負けるショタも良い。でも物語にはほとんど活かされなかった…。
伏辺或斗(CV:堀江瞬)―『D_CIDE TRAUMEREI THE ANIMATION』
つらい思いをしながら気丈に振る舞っているショタは良い。
あおま(CV:内田彩)―『ぐんまちゃん』
ぐんまちゃんよりもちんちんが小さそう。両親が教師で厳格というのもかわいい。
長名なじみ(CV:村川梨衣)―『古見さんは、コミュ症です。』
いろんな意味でショタなのかよくわからないけど、曖昧なのはとりあえず入れておく。村川梨衣は本作の最大の功労者だね。
ルーグ(CV:小市眞琴)―『世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する』
全裸クネクネダンス(ねっとりカメラワーク)で大爆笑。声変わり後(CV:赤羽根健治)も夢精したり娼館通いがバレてたりやたらとロマンティックな演出でセックスをしてたり、全部面白い。月夜涙先生のかったるいパートを飛ばす意志力と力強く簡潔なセリフ回しのセンスは本物だと思う。
桜井優人(CV:堀江由衣)―『先輩がうざい後輩の話』
高校生でその容姿や性格は設定に無理ありません?
ボッジ(CV:日向未南)―『王様ランキング』
ダイダとの年齢差で考えるとボッジって思ったより年齢高そうなんですよね。
ウィル(CV:河瀬茉希)―『最果てのパラディン』
女性声優を当てようっていうのはどういう判断だったんだろう…?今期の夢精枠でルーグと双璧を成す。
イブロギア(CV:堀江瞬)―『魔王イブロギアに身を捧げよ』
かわいい系がスレたおじさんを攻めるのも良い。
二宮(CV:花江夏樹)―『漁港の肉子ちゃん』
小学校のクラスメイトって、一生で関わる人間の中でトップクラスに不確定性が高くて、予想もつかない人間がいたりしますよね。もの静かでよくわからなくて、何か変な動きしてて、でも話してみるとしっかりした自分の世界を持っているいいやつだったりする。
ビーバー(CV:潘めぐみ)―『サイダーのように言葉が湧き上がる』
ラテンアメリカ系ショタ。宮沢康紀作画で動きまくったけどストーリーにはそんなに絡まなかった。
トウマ(CV:工藤阿須加)―『アイの歌声を聴かせて』
ヒロインの相手役が弱そうなメカオタクなのは意外性がある。紀伊カンナのデザインは見事。さすが若い男を魅力的に描く本職だけある。
恩田順平(CV:白石涼子)―『映画 さよなら私のクラマー ファーストタッチ』
姉がフィジカル的に男子に対抗できるギリギリのチャンスを掴むために犠牲になった男。それはまさしく分水嶺であって、姉とは対照的に順平はこれからどんどん強くなる。そういう儚さもさ、いいんだよな。
総評
今年も例年通り難産だった。単純に一年分思い出して振り返るというのが大変なんだ。加えて年々アニメショタをお下品な目で見られなくなっている気がする。自分の加齢のせいかもしれないし、あるいは単に作品とのめぐり合わせなのかもしれない。それでも自分の独自の視点を持つことと、長い時間をつぎ込んだアニメ視聴という活動をきちんと総括することには意味があると思うので、情熱がなくなっても義務感で続けていきたい。
各キャラクターの欄では触れられなかったのは声優の話だ。2021年現在のショタ声優で強いのは藤原夏海・田村睦心・小市眞琴。花守ゆみりも上手い。
お読みいただきありがとうございました。2022年もよろしくお願いします。