Skip to main content

『どうにかなる日々』を見た(2回目)

· 10 min read

はじめに

一度目の鑑賞では話の筋がよくわからずちんぷんかんぷんだったが、その後同行者と議論し、原作を読み、ブログにまとめて一週間考えてもう一度見に行ったらだいぶすんなりわかったし、細かい演出まで味わうことができた。BDが売られたらもっと見て研究したい。

Episode1 えっちゃんとあやさん

音響の良さが光っていたエピソード(音響まで気にする集中力が保てていたのが最初の一本だけと言う可能性もある)。あやさんがえっちゃんに手を出すところでBGMが入ってアガる感じなのが面白い。あやさんがえっちゃんの家に来てセックスするシーンでは下校する子供の声が聞こえ、セックスの後には子どもたちの姿も遠景で映る。子供が楽しそうに歩くのと同じ世界で2人はセックスをしているという演出。セックスを特別扱いしない姿勢は志村貴子の原作に忠実であり、それをアニメとしてより強力に表現している。

互いの家のシーンが始まるまえに街の情景を映す止め絵の風景カットが入る演出もよい。2人がそれぞれどんな土地に居を構え生活しているかを具体的にイメージさせ、そこらの街で実際に起きてそうな印象を与える。

音を足してみたり、風景を足してみたり、足し算によって逆に作品の温度を下げて「本当にありそう」感を出していくのはアニメならではの面白いアプローチだと思った。

Episode2 澤先生と矢ヶ崎くん

話は相変わらず難しい。澤先生の「他に好きな男が…」というセリフだけがヒントで、矢ヶ崎くんとの関係はおそらく1年以内に終わっている。それ以外は1回目視聴時の解釈でだいたい正しそう。ストーリーの含蓄というか奥深さでは一番だろう。

澤先生が田辺家で眠るときにギシギシという効果音が鳴っていたので、姉が踊っていたというのは直球でセックスしていたという意味でよさそう。

Episode3 しんちゃんと小夜子

前回の感想で繊細に描かれる人と人との繋がり「どうにかなる日々」感想という記事を紹介した。この観点で見ると、しんちゃんの子供部屋が密室となるべく設定されていることに気づいた。

しんちゃんの部屋にはエアコンがあり、夏なので冷房を効かせるために窓もドアも閉めている。そしてテレビもビデオデッキもあるからビデオ試聴会も子供だけの密室で行える。そんな密室の内側にもう一段階押入れという密室があり、その中から小夜子が見ているという構造が面白い。小夜子は密室の内側に入れる人間なのだ。それは(両親が小夜子を信頼しているというのもあるだろうが)小夜子がしんちゃんに勉強を教えたり恋愛を指南したりする、どちらかというと子供側の存在だからだ。

しかし一方で、小夜子はAV女優でもある。それは完全に大人の職業だ。だからみかちゃんが持参した「チェリー」をパクリと食べてしまう。いとこであり同じ部屋で生活する小夜子が、同時に大人であり性的に成熟した存在でもある。そんな倒錯した状況でしんちゃんの感覚が狂わされるのがEp3の主眼だ。

小夜子が去って季節が秋になると虫の声はセミからコオロギに変わり、しんちゃんは密室だった子供部屋の窓を開ける。それは小夜子がいた夏がもう終わってしまったことを意味する。

他に気になった点としては、しんちゃんが押し入れに入るときに1回目は下段(小夜子が寝ている方)で2回目は上段だったこと。絵コンテにもはっきりと指定があり意図的な演出なのだが、どういう意図かな。1回目は風呂で小夜子のイメージに悩まされて冷静さを失っていたので間違って小夜子の方に入ってしまったということ?

Episode4 みかちゃんとしんちゃん

3年後も小夜子の幻影に悩まされる2人をみかちゃんの側から描いたエピソード。みかちゃんが小夜子に縛られているのは小夜子のビデオを見ていることから明らかだが、しんちゃんもそうだと思う。というのはみかちゃんが背中から体を押し付けたときのしんちゃんの反応は小夜子に胸を押し付けられたときのことを思い出してそうだったからだ。そこでしんちゃんは小夜子の胸の大きさを思い出したからみかちゃんの胸を揉んだのではないだろうか(そしてみかちゃんは偶然か女の勘か、しんちゃんが小夜子を忘れていないことに気づいている)。

だからEp4を単にSideみかちゃんと見るのは正しくないような気がしている。Ep4のしんちゃんの内心が表現されたシーンに、しんちゃんがみかちゃんに(雨の音を楽しんでいる)自分に酔っているだけじゃないかと意地悪を言うシーンがある。これはしんちゃん自身に心当たりがあったりするのだろうか。

なおこのシーンの舞台の横断歩道はEp3にも出てくる。右側に水たまりがあり歩けない。Ep3だと右側に立つのはしんちゃんだが、Ep4だとみかちゃん。

みかちゃんの「前日のほうが好き」という発言も興味深い。思春期の恋愛のセックス未満の話を描いている作者自身の話だろうか。

3週目の劇場特典マンガを読むと、Ep4終了時はまだセックスしてないらしい。へぇ〜。胸を触らせたししんちゃんを想って自慰もしており、小夜子の幻影も乗り越えられたのにその後しばらくプラトニックで続くというのは意外だ。むしろEp4のみかちゃんが勇み足だで、小夜子のプレッシャーがなければ焦る必要はないということか。

おわりに

たくさん努力して頑張って視聴すると面白いんだけど、やっぱり初見の爽快感とかもないと商業的には成功しにくいだろうなあ。