めちゃくちゃネタバレあります。
全6話はやっぱり短かったなぁ〜。1クールくらいで構成を考えた後でやっぱり全6話になってめちゃくちゃ圧縮したと言われても驚かない。『電脳コイル』だったらこの要素を膨らめる準備として具体的なエピソードがいくつか入ったんだろうと思うような飛躍が多かった。だからこの作品の宣伝のために『電脳コイル』を再放送するのはよくないですよ。磯光雄に2クール作らせてあげられない時代になってしまったんだなあと悲しくなる。
2話が最高に面白かった。SF設定とキャラクターの物語のかみ合わせがすごくよかった。人智を遥かに超えた人工知能が暴走して殺処分になったとか、月で生まれた子供たちのうち2人だけが生き残っているとか、月での成長のためにホルモンバランスを整えるインプラントが第2次成長期のホルモンバランスの変化で不具合を起こすとか、そういうSF的にワクワクする設定が、登矢のキャラクターにつながっていく。しかもそれらの提示がハプニングに対処する中で自然に行われるのだから見事だ。でも設定お披露目回が一番面白いというのは構成の失敗の現れだと思う。
3話・4話でスピード感がなくなり、5話で那沙の正体でなんじゃそりゃ!となり(彼女と戦うシーンは絵的にも面白みがない…)、6話はスピリチュアルからの謎ハッピーエンド。視聴後感はあまりよくなかった。AIが示す道筋に対して子どもたちが自分の意志で何を掴み取るのかというのが大事だと思うんだが、最後までなんとなくAIのお膳立てのとおりに進行。ポイントは心葉を助けられたところだと思うんだけど、なぜそうなったのかよくわからない。
終盤はメディア論とか科学論(オルタナティブファクトっぽくて緊張感があった)とかで磯光雄の思想をそのままキャラクターが喋るような無理のあるシーンが多い。原作者の思想にひたすら深く潜り続けるせいで視聴者にイマイチ伝わらなくなってしまっているのは『海獣の子供』と同じだと思った(スピリチュアル展開とクジラの歌の神秘性は相性がいいんですかね)。企画から制作まで時間がかかりすぎて原作者だけが理解できる方向に熟成されすぎたのかな…?かと言って『海獣の子供』のように画面の強さだけで映画が成立してしまうほどの強度もない。
クオリティ面だと作画はさすがに良い。特に表情のコントロールは素晴らしい。でも吉田健一が作画監督をやった6話を見てしまうと、実はこれまでの話数は吉田デザインをあんまり描けてはいなかったんだなと思った。OLM系のスタッフがちょくちょく参加していたのが意外だった。