※本記事内の画像はアニメ『徒然チルドレン』および”http://tsuredurechildren.com/至近距離恋愛/”より研究のために引用したものであり、それらの権利はそれぞれの権利者に帰属します。
『徒然チルドレン』は高校生のカップルの短編集である。
必然的に男女2人の会話が中心になる。原作では4コマという形式もあり、比較的シンプルな構図が多い。
一方でアニメでは原作をかなり膨らませた演出が行われており、メディアの違いを反映していて興味深い。
3話Ep1『至近距離恋愛』は原作がネットで公開されているので定量的分析を試みた。
全部載せると引用の範囲を超えるので例示に留めるが、以下のような原作とアニメの対照表を作った。
原作は4コマ×11本の計44コマから構成されている。
このエピソードでは原作の3本目(9コマ目)から千秋と香奈の2人きりのシーンになるので、そこから最後までの36コマを分析の対象にした。
それに対応するアニメ側のカットはC15からC52までの38カットである。
図1.各4コマ漫画に対応するアニメの時間
図1は分析対象である9つの4コマ漫画それぞれに対応するアニメの尺を積み上げ横棒グラフで表現したものである。縦棒は時間を9等分した箇所を示している。アニメの尺の切れ目は9等分の線と比較的よく対応している。このことから、アニメは4コマ漫画という構成単位では原作のバランスを維持している。
表1.各4コマ漫画に対応するアニメのカット数
表1に9つの4コマ漫画それぞれに対応するアニメのカット数と、それを4で割った値を載せた。1つの4コマ漫画に対応するアニメのカット数が4.33であり、1コマあたりは1.08なので、原作のコマをそのままアニメにしているように見えるが、4コマ漫画間の標準偏差は3.13と非常に大きい。このことから、原作の1コマをアニメでは複数コマに拡張したり、逆に原作の複数コマをアニメでは1コマに収めたりという工夫が多く行われていることがわかる。
表2.原作の各コマに描かれているのは誰か
表2に原作の各コマに描かれているのは誰かをまとめた。ほとんどのコマ(88.89%)で2人が同時に描かれている。
表3.アニメでそれぞれの人物が画面に映っている時間と割合
表3にアニメでそれぞれの人物が画面に映っている時間とその割合をまとめた。時間ベースのキャラクターの描写量は原作と大きく異なる配分になっている。すなわち、香奈のみを映したカットが激増している。
まとめ
- ひとつひとつの4コマ漫画は概ね同じ尺でアニメ化された
- ひとつひとつのコマはアニメ化にあたって時間的に大幅に拡大・縮小されている
- 原作では大多数のコマで千秋と香奈が両方描かれているが、アニメでは香奈だけが描かれている時間が非常に多い