本記事中の画像は研究の目的で『星合の空』3話から引用したものであり、これらの権利は赤根和樹・エイトビット/星合の空製作委員会に帰属します。
3 話は樹と柊真が苦しむ回。光を活用した演出に注目。
柊真
新城家の暗さ
新城家は昼間から暗い。母親は冷たい。
対比として、桂木家は夜でも明るいし、母親は優しい。食卓は賑やかい。
- 1 話で柊真は広いテーブルで 1 人で朝食を食べていた
だからあやに「また遊びにおいで」と言われたときの柊真はあんなに嬉しそうなのだ。
理解者:涼真
悩んでいる柊真に涼真は「お前は悪くない」と言う。このシーンの 2 人には強い光が差し込んでいる。
樹
樹は自らの家庭環境をからかわれて苦しんでいる
怒りの噴出
樹がキレてラケットで不良を殴ったとき、樹は暗く描かれる
理解者:桜井先生
暴力を振るった樹に対して、桜井先生は事情を汲んで寄り添ってくれる
このとき窓から強い夕日が差し込み、樹を照らしている。
理解者:菜美恵
姉の菜美恵も心配して待っていてくれた。強く叱責はせずむしろ殴った気持ちは理解してくれている。
菜美恵の後ろから夕日が差している。
樹は顔をそらすのをやめて前を向く。これによって樹の顔が光に照らされる。
理解者たちの光
少年たちの苦しみが闇、そこに寄り添い手を差し伸べる者が光とともに描かれることを見てきた。最後に闇と光の関係をもっともダイナミックに活用したカットを紹介する。
更衣室で樹の事情を聞かされた眞己が「母親にお湯をかけられたなんて、言いたくないだろうね」と言いながら上を向く。このときカメラがゆっくりと上に移動し、それによって薄暗い更衣室に差し込む光が画面に入ってくる(gif は色が狂うので niconico とかでちゃんと見て)。
眞己が樹の理解者に転じたことを視覚的に補強する演出。
柊真と樹の交差
どうして 1 話で 2 人を同時に苦しめたのだろう。それはソフトテニス部が苦しんでいる人間が集まって支え合っている集団だということを表現したいからだ。
柊真が「俺を許してくれるか」と言うシーン。何度もズル休みしている晋吾が「許す!」と言い、前日に暴力沙汰を起こした樹が「暴力はやめなよ」と言う。他人の弱さを見ることで自分の弱さを忘れようとしている。
- 他人の反応を気にせずに妄想を語る直央が「スルーしたよ樹くん」と言うのもそう
そういう集団のあり方が良いのか悪いのか、僕にはわからない。彼らに確かに必要な場だと思う一方で、それは傷の舐め合いにすぎず、立ち向かう強さの獲得にはつながらないのではないかとも思う。
- 監督はインタビューで「決して傷を舐め合うのではなく、傷を埋め合う、補い合う仲間たちの話にしたい」と語っている
「傷の舐め合い」の中で柊真は木陰から日向へと(闇から光へと)移動する
だが、眞己はまだ闇の中にいる。
監督の言葉を裏付けるかのように、一見落着したかに見える部活に眞己がさらなる波紋を起こしていく…