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『THE FIRST SLAM DUNK』を見た

· 7 min read

10/10

原作を読んでないと若干飛躍を感じるところがあるので「完璧」とまでは言えないんだけど、考えれば考えるほど全てがいい作品だったなあと思えてくる自分の気持ちにウソはつきたくないので10点出しちゃいます。

CGの質が高くて驚いた。一般にCG(+モーションキャプチャーかな?)は動きをリッチにし複雑なカメラワークを破綻なく実現できるメリットがある。一方で弱点は変形で、それが表情芝居の硬さや物体の接触時の違和感につながる。しかし本作ではこの弱点を(おそらく膨大な手作業による修正?によって)克服している。10人が目まぐるしく移動するバスケの試合をほぼ実時間で表現するためにはCGは必須だったが、加えて試合中に細かく展開されるキャラクター同士のコミュニケーションや、激しいプレイのぶつかりあいなども違和感なく描かれており、エピソードの100%の魅力を引き出すために必要な努力だったなと感じた。技術の方向性とやりたいことが一致している作品を見るのは気持ちが良い。演出の宮原直樹がパンフレットのインタビューで「アニメ映画という括りを越え、スポーツ映画のスタンダードとなる可能性を持った映像」と語っているが、その通りだと思う。まあプロジェクトとして動き出したのが2009年とのことなので、13年もかけられる作品はそうそうないだろうが…。

予告を見たときに割と否定的な感想を持ったんですが、全くそんなことなかった。「俺達ならできる」は目まぐるしい試合との対比の静寂のシーンであるというコンテクストがないと理解できないし、その他の試合のカットも前後の流れがあると見え方が全然違った。

試合以外では2Dアニメーションの方が多かったかな。事前のイメージより多かった。井上俊之が来ていると聞いていたので気にしながら見ていたけどどこだかわからなかった。どこも劇場アニメーションとして満足できる水準だった。特に記憶に残っているのは冒頭の未清書の鉛筆線の歩き、少年リョータの崖登り、長尺俯瞰ケーキ切り、海岸を走るリョータ、桜木のダイブ後の観客の反応、ラストシーンで走ってくるアンナ。まあ明らかに井上俊之だなとわかるのは作品にとってはあんまり良くないことだと思うので、上手く紛れて良い作画をしてくれるのが視聴者としては一番嬉しいかな。

原作は未読。ストーリーは試合の間に回想が挟まれる、スポーツアニメでよく見る構成。家族の死を経験し、それを否認していたがやがて受容するという流れは典型的なものだ。かつて9歳のリョータに比べれば12歳のソウタは大きくて頼もしかったが、12歳で時間が止まってしまったソウタよりも17歳のリョータの方がさらにがっしりと頼もしく成長しているという反復と差分の演出が良かった。ストーリーのテーマを絵として納得できる形で表現するのは大事なことだ。

湘北も山王も全員魅力的で見せ場があったのが良かった。山王は坊主頭なので判別は難しかったけど…。序盤は顔合わせでお互いの強みを紹介する流れ。後半は河田の存在感と沢北のクールな強さ、それに対して「そんなタマじゃねーよな」と「ドリブルこそチビの生きる道なんだよ」のシーンは痺れるカッコよさだった。桜木が漫画の主人公なのは知っていたが、全員超かっこいい動きをしているなかで桜木だけはギャグテイストの動きも混ざっていてそれも面白かった。

なんというか、僕なんかがどこが良かったとかそういう話をできるアニメではなかったな。全部なので。面白い原作を高い技術でアニメ化した結果当然に面白いという、横綱相撲アニメ。見ると良いと思います。