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2023年アニメショタ10選

· 50 min read

はじめに

こんにちは。栄西・the・博愛僧侶です。今年も例年のフォーマットに概ね則り、作品賞・エピソード賞を含んだ10選と番外編でお届けします。 それでは、お楽しみください。

過去分はこちら

エピソード賞 『NO BIKKURI, NO LIFE.』(『ビックリメン』4話)

脚本中西やすひろ
絵コンテ設楽直美
演出月見里智弘
演出高津智子
ミュージックシーン 絵コンテ・演出設楽直美
エレキベース演奏村田悟郎
ED 絵コンテ・演出月見里智弘

Ⓒロッテ・ビックリマンプロジェクト/ビックリメン製作委員会

貴重な復刻第一弾のビックリマンチョコを手に入れたいジャック(高1, CV:橘龍丸/種市桃子)は、ベースサイドストリート(モデルは福生市?)の服屋に在庫があると聞いて買いに行く。しかし外国人の店員たちはビックリマンチョコがなんなのか知らず、B系ファッションを買いに来たと思い込んで楽しげに接客してくる。一度はその接客攻勢に負けて服だけ買って出てくるジャックだったが、自身が幼いころ外国人の外見故に友達ができなかったこと、ビックリマンチョコがそれを乗り越えるために役立ったことを思い出し、好きなものをきちんとわかり合おうと決意する。そして特技のベースに合わせて英語のような日本語の歌で、ビックリマンへの愛を歌う。

ジャックがビックリマンを愛する理由が明かされる回であり、いわゆる「歌回」(挿入歌に合わせて歌の力と勢いで問題が解決する回)でもある。ベースサイドストリートの美術や外国人店員のファッションもしっかりしており、テレビアニメ独特のある話数だけ違った空気感になるやつが摂取できて脳に良い。歌唱シーンの映像も特殊EDも良い。

福生市にアメリカンなストリートがあるのは横田基地があるかららしいが、そこでジャックがイギリス生まれという設定になっているのは興味深い。イギリス生まれ日本育ち、外見は西洋人だが英語は喋れないし、おそらく米軍基地関係者でもない。そういう背景まで考えてみると、ビックリマンが友達を作るきっかけになったというのは彼にとって大きな出来事だったのだろう(アニメで髪色がメチャクチャなのは見慣れちゃうけど、そこにちゃんと意味があったとわかるのも良いね)。

なるほどなあ。

作品紹介

ビックリマンを題材とした擬ホビアニ。ホビアニのようなおもちゃを中心とした楽しい世界観ではあるが、主人公はかわいめのデザインの高校生の男子3人で、女性人気を狙っているようだ。僕も好き。今回紹介した4話の他にも6話ではプールで水着をなくして露出の危機、しかも敵対する小学生に「諦めて晒しちゃいなよ、君たちの貧相なモノをさあ」と煽られる。嬉しい。この世界にもモノが貧相なのは恥ずかしいという概念あるんだ(モテようと思ってベースを始めるという概念もある)。

キャラクター10選(放送時期順)

夕凪ツバサ(ひろがるスカイ!プリキュア)

CV村瀬歩
年齢12

©ABC-A・東映アニメーション

情報公開時に話題になった、初の男性レギュラープリキュア。プリキュアに新しい視点を導入してくれるものと期待していたが、そもそも人間ではなく、男だからどうこうという話はあまりない。それがいいというのはあるかもしれないけど。プリキュアの最も重要な個性である変身バンクも美馬健二の特徴である関節の柔らかいしなやかな動きが残ってしまっていて違和感がある。あげはとの絡みは執拗に入れてくるので薄い本ばかり厚くなっている。プリンセスに異常な愛情を抱いているのはちょっと面白い。王党派?ずっと抱いていた自分の力で空を飛ぶという目標がプリキュアになって叶ってしまったとき、次に何をすれば良いのかという問いに対して回答を出している21話は名エピソード。

作品紹介

プリキュアシリーズ20作目。最初は10年続けばいいと言われていたそうだが、もう倍まで来てしまった。脚本の守護このみと演出の土田豊がそれぞれ強烈なギャグを繰り出す。作画では森田岳士が活躍。昔からプリキュアシリーズに参加している実力派だが近年さらに絵の力が増している。構成面では24話以降ダレているが、これも含めてプリキュアの様式美かもしれない。

トムラハル(逃走中 グレートミッション)

CV小林由美子
年齢14

©フジテレビ・東映アニメーション

主人公・颯也の弟。1話時点で貧困居住区の風土病を患っていたが、シブヤステージ後にモーリスから送られた金で治療している。颯也の活躍を見て自身も逃走中への参加を望むようになるが、病弱なハルを心配する颯也からは「お前には無理だ」と一蹴され、正体を隠して参加することになる。謎解きが得意。逃走中で謎解きの見せ場を作るのはちょっと無理がある気がする…。兄といつか本物の青い海を見に行くのが夢。作品の大部分は逃走中のゲーム内なのだが、舞台は月面コロニーなのでそもそも海とは…?となる。もしかして終盤は突然SFアニメになって地球に行ったりするんだろうか。そこまで広げて畳み切ったら見事なものだと思う。楽しみだ。

作品紹介

どういう事情で作られることになったかさっぱりわからない貝澤幸男大先生の最新作。あの「逃走中」をアニメ化するにあたって、「未来の月面世界の貧困層から富裕層までが一堂に会する大会」という設定にしたのが面白い。尖ったキャラクターがたくさん出てきて楽しいし、舞台も毎回独特でバラエティに富んだワクワクを提供しようという心意気が嬉しい。

演出家では宮元宏彰や若手の髙戸谷一歩が活躍。貝澤先生もたまには各話演出やってくれていいのよ。アニメーターでは大ベテランの直井正博の表現力豊かなポージング、小泉昇の力強いアクションが楽しめる。他にも志田直俊、デニス・カブラオ、廣田訓之、舘直樹、長田信博などが参加。

高田太陽(事情を知らない転校生がグイグイくる。)

CV石上静香
年齢小5

©川村 拓/SQUARE ENIX・事情を知らない製作委員会がグイグイくる。

小学5年生で手足が細くてすらっとしていて、声が高くて柔らかくて、足が速くて性格が純粋でさあ…俺でも好きになっちゃうよ。全部言葉に出してしまうから「内心」というものが希薄なキャラクターで、だからこそ茜相手に「ひとに言えない気持ち」が芽生えていくのが、いいよね…

作品紹介

引っ込み思案で「死神」と呼ばれいじめられている西村茜の前に現れた転校生の高田太陽は、「死神」をカッコいいものだと思って茜と親密になる。純粋な太陽との交流で茜の生活は楽しいものになっていくが、純粋すぎて距離感が近すぎる太陽に茜は性的な興奮を覚え、太陽もまた自分の気持ちがわからなくなっていく。過熱した欲望は、遂に危険な領域へと突入する…。太陽の性格のおかげで明るく楽しい雰囲気だが、要所では影山監督が得意とする周囲の事物を利用した叙情的な演出で、ここぞの感情の動きが表現されて美しい。

マル(天国大魔境)

CV佐藤元
年齢15

©石黒正数・講談社/天国大魔境製作委員会

設定上の美少年。自分と同じ顔の人間を探している。年上のボディガードのキルコが好き。その想いを伝えたときにキルコの衝撃的な「正体」を知るが、それでも愛が変わらないのは純愛なのか盲目なのか、肉欲なのか、それとも「それがいい」のか。本人にもわかっていないのだろうし、その混乱を我々も体験できるのは作者の組み立てが見事だ。キルコの留守中にエロ本で自慰をしていた描写あり(寸止め)。

作品紹介

壁に囲まれた「学校」で生活する不思議な力を持った子どもたちと、荒廃した世界で旅をする2人組の物語を交互に描きながら、少しずつ両者の関係が見えてくる。エログロ大いにアリ。世にはエロを主眼としたアニメはたくさんあるけれど、性を搾取することへの真剣さ、倒錯の深さではなかなか並ぶものがないパンチのある作品だった。クオリティも素晴らしかったがアニメだけ見ていてはあまり満足感のないところで終わってしまったのが残念。まあ原作付きアニメが1クールでキリのいいところで終われるかというのはほぼ運なので仕方ないか…

青野一(青のオーケストラ)

CV千葉翔也
年齢15

© 阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

申し訳ないけど心に深い傷を負っている少年は良いよね…。やっぱり強さと弱さの両方が見えるキャラクターって魅力的。父親の不倫で苦労し、しかもその結果産まれた腹違いの弟と同じ部活で毎日顔を合わせるって、彼は自分の男性性についてどんな自己認識を持っているんだろう。ちなみにヴァイオリニストの世界では五嶋みどり・龍の異父姉弟が有名。直とチンポ相撲しろ。秋音律子とも小桜ハルとも特に何もなく直との関係だけが強化されていくの面白いだろ。

作品紹介

かつての天才少年が再びヴァイオリンを取り、オーケストラに入っていろいろな人に刺激を受けながら成長していく。といってもキャラクターが多くそれぞれに小さい話をやっているのであまり強固なストーリーラインは感じられない。青野自身の方向性についても「お前の演奏はソロなんだ」と批判された一方で結局ソロでの演奏の良し悪しで席次決めをやったりしていて、よくわからないところがある。

クオリティ面では半分くらいの話数では外国への丸投げになってしまい、演出は少数精鋭で頑張っていたものの作画は厳しさが目立った。日本アニメーションの現代水準のアニメを作る山本秉碩APのラインに注目すると『やくも』は15分を分割2クール、『ラブオールプレー』は30分連続2クールをOLMと折半だったので、単独で30分アニメ連続2クールが厳しいのは予想通りだった。それでも自社回はいい出来だった。演奏シーンは3DCGも使われていたが、ヴァイオリンの発音で最も重要な弓から弦にかかる圧力と摩擦の表現が弱く違和感があった。過剰な警察行為かもしれないが…動きは参考動画からトレースすることが出来ても、そこにかかっている力は経験してみないとわからないのだろう。

オリバー=ホーン(七つの魔剣が支配する)

CV田丸篤志
年齢15?

©2023宇野朴人/KADOKAWA/キンバリー魔法学校

魔法学園アニメの主人公で、一般的な評価基準では並かそれ以下だが実は強力な一芸を隠しているというのはお約束。内面的には成熟しているが周りに合わせて学生らしく振る舞っているのもお約束とすれば、このキャラクターの魅力は復讐を固く誓いながらも、学友たちとの友情や、ときには性愛を含んだ関係も大事にしているという二面性にある。男性限定性欲亢進パフュームの中でナナオにくっつかれて勃起が我慢できないシーンは田丸氏がいい演技をしていた。

作品紹介

作者自ら「児童文学じゃないハリー・ポッター」と称する魔法学園もの。魔法の研究は人権より重要であるという価値観の学校を非情な現実として提示しつつ、その中で非情になれない子どもたちの葛藤を描く。性が世界設定と深く結びついているのも特徴的で、性別転換が純粋に魔法の能力の向上という実益で珍重されていたり、女性の出産の能力それ自体を魔法として濫用するキャラクターが出てきたりと、生々しいというか生臭さがある。

小村楓(好きな子がめがねを忘れた)

CV伊藤昌弘
年齢13

©藤近小梅/SQUARE ENIX・製作委員会がめがねを忘れた

三重さんのことが好き。隣の席からメガネを忘れた三重さんを助けることで距離を詰めていくが、三重さんが困って自分に頼らざるを得ない状況を利用して接近することに罪悪感を持つという真摯さがある。それはそれとして三重さんへの感情が行き過ぎて内面はちょっと気持ち悪いレベルに達しているけれど、伊藤昌弘殿の体当たりの演技のおかげで等身大の余裕のなさが感じられて良かった。特に6話の席替え回は必見。SNSでギリギリのエロ画像収集して三重さんに差し替えて想像してる。

作品紹介

目が悪いのにメガネをよく忘れる三重さんを小村くんが助ける中で仲良くなっていくラブコメ。明らかに周りの人間にバレバレなレベルでイチャイチャしているのにクラスメイトのスルースキル高すぎだろ!と思っていたら終盤で周知の事実だったと明かされるお約束は美しかった。

「見える/見えない」とか三重さんの距離感が近すぎることを題材とするこの作品にとって、CGでガチガチに作り込んだGoHandsの背景・レイアウトはプラスに作用していたと思う。異端のルックではあるけれど、これでいいんだと信じて彼らなりの美を提示してくる心意気にはいつも感服する。作中の背景は高円寺・吉祥寺、あと部分的に心斎橋から取られている(GoHandsのスタジオが大阪と高円寺にある)。全話完全社内原画で同クールに2本を2年の準備期間で走り切るGoHandsの力はすごい。全部社内でやることを前提にいろいろな最適化ができてるんだろうか。

https://mstdn.minnanasi.net/@min_nan_a_si/statuses/01HB7R6GXJ4HJEHBWDXJJDFSYP

好きめがOPの小村くんが花びらに吹き上げられるカット、赤毛のアンのオマージュだということを知った https://www.nicovideo.jp/watch/sm26033864?from=422

菊入正宗(アリスとテレスのまぼろし工場)

CV榎木淳弥
年齢14?

©新見伏製鐵保存会

顔が丸っこくてまだ子供っぽい趣を残していて、髪が長くてサラサラで、友人にも女っぽいと言われて胸を揉まれている。それでいて声変わりは完了していて、こう、何ていうのかな。大人の体つきに変化していく全段階として、手足がボリュームを伴わずにひょろっと長いようなデザインはよく見るんだけど、丸さ、肉感のある顔つきってのは結構新しい挑戦のような印象を受ける。それでいて他人が信用ならないような鋭い目つきもすることもあってさ…。小説版だと五実入浴介助中の心情とか自慰禁止令とかあるので読みましょう(大した内容じゃないので期待はずれだって怒らないでね)。榎木くんの演技と素の境界線を行くような喋りが合っていて、盛り上がるキスシーンで「でも。すごい、心臓動いてる。はやい」という小学生みたいな感想が榎木ボイスで出てくるのが、未熟な2人が衝動に突き動かされている様子がありありと伝わってきて良かった。

作品紹介

岡田麿里の最新作。大体いつもの。過剰にねっとりした思春期の性描写からの愛の力で全部なんとかなるんやーという剛腕展開、でも今作はだいぶロジックも納得感があって技術的によくなったなと思った。脚本家監督の作品だからかクライマックスがテンポの良いセリフベースで進んでいたのが面白く、気持ちが大事だよというテーマにも合っていたのだなと思う。石井百合子のデザインはMAPPAの作画力の後押しを得たのか更に繊細さを増しつつも量感が感じられ見事。

番外 これもうショタってことでよくない?賞 ドット(ポケットモンスター(2023))

CV青山吉能
年齢不明

©Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku ©Pokémon

初登場以前から「姪」と言われて性別が確定していたが、僕は信じていない。着ぐるみYouTuberとしてはハイテンションで大人気だが、リアルではインドアで人間嫌い。そんな類型的なキャラクターが少しずつ変化していく様子を、たっぷりと話数をつかって贅沢に描いている。リコよりも身長が低いロイよりも更に低い。外見は野暮ったく無頓着で、目隠れそばかす服はだけと属性盛り合わせ。下がタンクトップなのも無頓着と言うか無防備で良い。御三家のクワッスをパートナーとしているが、OPやクレジットでの扱いはリコ・ロイと同格ではない。

作品紹介

『ポケットモンスター』シリーズの26年ぶりに主人公を交代しての新作。シリーズ構成佐藤大とシナリオコーディネーター(とは?)松澤くれはを迎えて、ある程度これまでのポケモンのお約束(バトル脳とか)もなかったことにして、1つの長大なストーリーラインを持つ新しい作品になっている。特に外伝系ポケモンアニメから抜擢されたコーニッシュの音楽が素晴らしく、多彩な音色を活用して等身大の感情の機微から壮大な冒険まで幅広く表現している。

作品賞 『柚木さんちの四兄弟。』

©藤沢志月・小学館/「柚木さんちの四兄弟。」製作委員会

両親をなくした4兄弟(23,13,12,6)が助け合いながら仲良く生きている話。1,2話程度で完結する短めのエピソードが多かった。

  • 隼(23, CV:岩崎諒太)
  • 尊(13, CV:戸谷菊之介)
  • 湊(12, CV:櫻井みゆき)
  • 岳(6, CV:寺澤百花)

湊の成熟

湊と尊は1歳差の同学年だが尊は声変わりしているし身長も高い。思春期は急激に成長するので、1歳差でも大きく体が違ってくる。しかしこれは裏返せば湊も1年以内に声変わりや急激な身長の伸びが来る可能性が高いということだ。そう考えると、6話で湊と宇多は友情を確認したが、互いの性別に無頓着で友人でいられる時期はもうすぐ終わるのだなということが予感されてすこし寂しい。

湊はいろいろな面で尊をライバルとして見ているが、身体発達の面だと尊と同等になるかは疑わしい。というのは湊は未熟児で体が弱かったのでその影響があるかもしれないからだ(一般的には中学入学時には既に差はなくなっているそうだが、作者がどこまで考えているかは不明…)。

8話では岳と湊はいつも一緒に入浴することが明らかになる。この日はイレギュラーで岳と尊が一緒に入るのだが、尊が岳を経由して湊の発育の情報を手に入れている可能性がある…いや逆の方がありそうか?両方ありそう。

4兄弟だからできること

4人いると2人関係は6本発生する(方向まで考えれば12本)ので、シンプルに物語に使える手数が多い。誰かが秘密を持つという話型にしても知ってる人間を選ぶ方法はざっくり2^4で16通りになるし、「ooが知っているということを知っている」というように複雑化していくこともできる(そこまでやると視聴者の負荷が高いが…)。

from/to
-苦労をともにする包容一目置く
苦労をともにする-溺愛愛しつつライバル視
認めてほしいライバル視-兄貴ヅラ
敬愛達観話しやすい-

兄弟の中での年齢差によって、親との思い出が違うというのもこの物語で重要な意味がある。隼だけが家庭が貧乏だった時代を知っているので、弟たちにはできる限りのことをしてやりたいと思っているが、その思いが100%理解されることは多分ないだろう。逆に岳だけが親が授業参観に来てくれたことがないので、岳に寂しい思いをさせてはいけないと3人は一致団結する(しかしその3人の中でも尊と湊はそれぞれ半分の時間しか来てくれておらず、ある意味では親を長期間独占した隼が一番恵まれているという見方もできる)。

周囲のサポート

4兄弟の仲がいいからこそ、問題を言い出せず抱え込んでしまうことがある。そういうときに霧島家や隼の同僚がサポートしてくれてなんとかなるというエピソードもあって、それもまた真摯でいいなと思った。やはり23歳の隼が3兄弟の保護者役をやるのはあまりに大変で、こぼれ落ちてしまうこともある。そもそも4兄弟の絆が強いのも両親の死によって否応なしに支え合いが求められた結果と見ることができ、その場合その絆の強さを肯定的にばかり描いてしまうのは痛々しい。創作物の中でなら両親の死を4兄弟の物語を書くための「設定」と割り切ることもできただろうが、ちゃんと苦労や危機も多いところを書いてくれるのが真摯だ。

表現

本郷みつると川崎芳樹のゴールデンコンビでほぼ全編を演出している。細かいところまで行き届いていてエラーがないだけでなく、本郷みつるが得意とする非セルアニメ風アニメーションや抽象表現も取り入れられていて、キャラクターの心情をより切実に感じることができた。立体の形を正確に表現するために三面図が使われるのと同じで、多様な表現手法によって人間の心はより細かく強く表現される。脈絡なく謎のてんとう虫とクワガタがキャラクターの情報を紹介するミニコーナーも、「本郷みつるだぁ…」と懐かしい気持ちになる。

作画の品質も全編通して力の抜けた箇所が全くなく、特に7話の子供の取っ組み合いは本気で頭に血が登っている速度感覚と、不安定なポージングが超上手い。OPでも4兄弟の性格を動きの違いだけで表現する志の高い(アニメにおいて、アニメーションの力で物事を表現しようとする挑戦の志が高いと言わずしてなんと言う)カットがたくさんあり、成功している。

その他一言コメント

白石純太(CV:河西健吾)―『久保さんは僕を許さない』

色も存在感も薄いけどなんか自室の湿度が高くて変な匂いがしそう。ティッシュもゴミ箱もベッドから届く位置にあるし。趣味の漫画のちょっとえっちなシーンでうっすら汗ばみながら毎日シコってそう。もしかして認識阻害を活用した大胆なプレイをしているという可能性もある?

桜田ゆうた&千川みなと(CV:青島れな&阿部里果)―『お兄ちゃんはおしまい!』

狙いすぎだろ!と言いたいところだけどここをちゃんと狙ってくれる作品はあんまりないので感謝してます。

キズナ(CV:小松未可子)―『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』

元気よくバタバタと動いてかわいい。

清瀬明良(CV:戸谷菊之介)―『UniteUp!』

スッキリしていて親しみやすい秀逸なデザイン。銭湯の子。可愛くていい子なんだけどアイドルアニメの常としてキャラクターが多すぎて彼個人の話はあまりなかったなあ。

チトセ(CV:田村睦心)―『劇場版 らくだい魔女 -フウカと闇の魔女-』

ザ・田村睦心のイケメン彼氏。あんまり活躍しないなあと思ったら最後にやってくれました。黄瀬和哉原画どこ?

佐伯直(CV:土屋神葉)―『青のオーケストラ』

海を超える執念深い性欲の持ち主ですよ。ショタ時代もたっぷり見せてくれて良かった。

ロイ(CV:寺崎裕香)―『ポケットモンスター(2023)』

ダブル主人公かと思いきや意外とキャラクターの掘り下げが見られない。リコがかなり屈折した内面の持ち主なのと対比して真っ直ぐな性格。リコより身長が低い(重要)。

レッツ(CV:佐藤はな)―『ゴー!ゴー!びーくるずー』

かわいい。

パオ(CV:白那美アンジュ)―『ゴー!ゴー!びーくるずー』

フォルムがアレ

竹早春希(CV:伊瀬茉莉也)―『天国大魔境』

姉への性欲を歪んだ形で成就させてしまった。しかも冷静に考えるとマルとも兄弟分のような関係になっていて二度美味しい。

ルッタ(CV:弘松芹香)―『冒険大陸アニアキングダム』

なりゆきで王になった男。俺もMAOボイス関西弁の幼馴染が欲しかったよ。父親が偉大な守り番(とは?)だったというような話があった気がする。

久我ふみお(CV:長縄まりあ)―『おとなりに銀河』

長縄まりあのショタという新型兵器。脳に良い。小さい男の子がダボッとした服を着ていて体の輪郭があまりわからないというのもそれはそれでよい。無造作な髪型に大きめのメガネという野暮ったい感じも年齢感がある。

カイン・フォン・シルフォード(CV:南條愛乃)―『転生貴族の異世界冒険録〜自重を知らない神々の使徒〜』

5年修行して成長したのにちゃんとショタに戻って帰ってくるの偉い…偉い?中村憲由はすごい。

チュン(CV:花江夏樹)―『雄獅少年(ライオン少年) -少年とそらに舞う獅子-』

もとより概念型ではあったけど18歳って言われてびっくりした。記事参照。

ピート=レストン(CV:杉山里穂)―『七つの魔剣が支配する』

らんま1/2。狙いすぎだしあるあるな設定なように見えて、この作品の根底の設定に割と性の話が絡んでくるのでじっとりとしている。

いがぐり(CV:誠(ヨネダ2000))―『いきものさん』

いわゆるデータベース的なキャラクターの情報はほとんど提示されないにもかかわらず、愛の深さと形は強く印象に残っていて、こういうキャラクター造形もありなのだなあと感心した。

ルーデウス・グレイラット(CV:内山夕実)―『無職転生 II ~異世界行ったら本気だす~』

2021年に引き続き2度目の登場。そうする価値があると思えるくらい豊かなキャラクターデベロップメントがあって良かった。

https://mstdn.minnanasi.net/@min_nan_a_si/statuses/01H9ZWN3XEE48N691Y86KZTE8Y

ルーデウスは対人関係はよく考えて理性的に行動していて、その現れが杉田の過剰なモノローグなんだけど、理性では男だと理解しているはずの人間に本能的にどうしようもなく惹かれていき、彼自身が理性と本能の間で葛藤する様子、コントロールが効かなくなっている様子が見ていて微笑ましい #無職転生

牧眞人(CV:山時聡真)―『君たちはどう生きるか』

宮崎駿が6年かけて繰り出してきた狂犬。物静かでいい子でありながら内面に衝動的な凶暴さも隠し持っているという造形はさすが。記事

ナゼニ(CV:岡本信彦)―『オチビサン』

かわいらしいデザインに優男風の声だけど、獣です。

朝雛悠(CV:古屋亜南)―『オーバーテイク』

年齢相応の迷いや世慣れなさ、デリケートががありながらもあまりそれを面に出さないガードの硬さは現代風だろうか。でも視聴者にもあんまりキャラクター見えてないと思う。

ミェンロン(CV:村瀬歩)―『SHY』

ヒーローならちゃんとピンチに陥らんかい!

六田守(CV:阿部敦)―『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』

数年に一回姿を表す距離感の近い未来人の面影を忘れられないまま過ごした、画面に映らなかった彼の人生を見たいね。

黒須エクス(CV:斉藤壮馬)―『BEYBLADE X』

チームメンバーと戦うために最強のチームを脱退するほどベイブレードへの情熱が強い。日常生活ではとぼけていて味覚が変。腹筋が出来ない。こういう超然とした役も斉藤くんは得意。

風見バード(CV:梅田修一朗)―『BEYBLADE X』

いきなり街に来たところから始まる、バックグラウンドが謎の男。個性は弱いこと。腕立て伏せをするシーンで割としっかりとした腕の筋肉が描かれている。分類としてはホビアニ主人公だろうが男性声優が当てられているのは時代の流れなのだろうか。OPEDもキャラデザもCMも対象年齢ちょっと高そうだもんなあ。

レオニス・デス・マグナス(CV:井上麻里奈)―『聖剣学院の魔剣使い』

大なろう時代に生きる古き良き時代のラノベアニメの末裔。魔王としての威厳ある態度とお姉さんにドギマギするショタムーブ

ミギ&ダリ(CV:堀江瞬&村瀬歩)―『ミギとダリ』

ここに入れたんだけどキャラとしての魅力よりは作品の完成度があまりに凄まじいのでぜひ見てください。1つの作品が同時に笑えて泣けて怖いってなかなかできることじゃない。

シュタルク(CV:小林千晃)―『葬送のフリーレン』

これはだいぶ概念ショタの部類ですね。でも顔の造形は幼めに寄せてる。長い移動を終えて宿屋に泊まれる日に何をやっているのかという話なんですよ。ちっさいらしい。

ヤマト(CV:梶田大嗣)―『ビックリメン』

足が速くて素直でよく驚いてかわいいね。

ピーター(CV:榊原優希)―『ビックリメン』

女性向けコンテンツ特有の男性声優小学生。でもかなり自然に高音出てて違和感なくてすごいね。10話で教会の少年合唱団に参加しているシーンがありかなり面白い。高音男性声優が演じる少年は少年合唱団に参加できるのか。実際は声変わり初期なら裏声で混じることも多いだろうが。

少年魔術師(CV:伊瀬茉莉也)―『ゴブリンスレイヤーⅡ』

ネギ・スプリングフィールド

プラム・シュナイザー(CV:藤原夏海)―『帰還者の魔法は特別です』

この手の作品で主人公に懐く弟分のポストがあるのは割と謎で、内心では女の子なんじゃないかと疑っている。チート薬師のエジルくんみたいなものか?「細剣」の使い手。

アベル・レムノ(CV:松岡禎丞)―『ティアムーン帝国物語~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~』

中身20歳の同級生に誘惑されるウブな12歳、良いですわ良いですわ〜。主人公のですわ〜な振る舞いに比べて年齢相応にに乗馬や剣術大会で青春していて良い。

シオン・ソール・サンクランド(CV:堀江瞬)―『ティアムーン帝国物語~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~』

アベル松岡に対してより成熟した雰囲気を出さねばならないこちらが堀江なの、面白いキャスティングだよね。堀江を未熟な方に振りたくなるけど、確かにこれも成立する。ダンスシーンは素晴らしい出来。

エミール(CV:小泉萌香)―『ポーション頼みで生き延びます!』

孤児であったところをカオル殿に洗脳され、親衛隊になって爆弾を投げたりしている。ちょっと演技力が…

ミナライ(CV:松浦愛弓)―『全力ウサギ』

ホワホワしているようでいて結構ノリのいいところもあって良い。最終回では成長も見せてくれた。

十朱大吾の幼少期(CV:國立幸)―『め組の大吾 救国のオレンジ』

少年が股間を揉まれる映像。

山本泰明(CV:松野晃士)―『窓ぎわのトットちゃん』

これは単なるキャラクターではないのかもしれないので真剣に。足が悪くても果敢に他の人と同じことにチャレンジする勇気があり、学年が上がるにつれてトットちゃんとしっかりと支え合うようになった。

あとがき

今年はかなりマッスルアニメ視聴をしていて、1年で150作品ほど見ました。特に秋は65作品ほど見ていたけれどこれは本当に辛くて、生活が犠牲になるうえに、好きじゃないアニメまで見るために好きなアニメについて研究する時間も失われる。アニメ視聴を娯楽とするなら明らかに間違った行動だけど、まあバカなことをするのって楽しいじゃないですか。それと真面目な話をすると、昨今のハイエンドアニメが広く人気を獲得する状況の中で、じゃあ誰が他のアニメを供養するのか、人気原作への集中的な資本投下によってむしろアニメの持つ表現の可能性は狭まっているのではないかという思いもあった。ショタには特に関係ないけど。

数をこなすことは今年で一旦クリアしたこととして、来年は質の向上を目指すというのもアリかもしれない。全ては作品とのめぐり合わせ次第だけど。今気になっているテーマは「ガゼボ」です。西洋風の庭園の中のドーム状の屋根があるエリアで、お茶したり談笑したりする場所。そこそこいろんなアニメで出てくる。作品横断系のテーマではなく単一作品を深く研究するというのもやりたいけど、これはそこまでやれる作品に出会えるかというのもある。

普段は https://mstdn.minnanasi.net/@min_nan_a_si でZIKKYOUしてます。来年もよろしくお願いします。