これは快作ですね。現実に照らせば「そうはならんやろ」という箇所はたくさんあるけれど、作品内のロジックは一貫していて気持ちよかった。
ぼくらの7日間戦争、素晴らしいエンターテイメントでめちゃくちゃ笑いました。全体的に狂ってるんだけど意外と作り込まれていて、B級映画の名作という感じ。おすすめできます。
— 栄西・the・博愛僧侶 (@min_nan_a_si) December 20, 2019
何と戦う?
原作は大昔に読んだし実写映画も大昔に見ていた。僕は暴力が好きだし権力は嫌いなので宗田理のメンタリティには共感するところが多かった。だが、2019 年現在、厳しすぎる服装検査のような理不尽な不自由は減りつつある(本当か?)。その一方で地方の衰退や少子化、そしてそれに伴って受け皿が不十分なまま外国人労働者が増えているという現実もある。だから子どもたちが戦う相手が「理不尽に子供を縛ろうとする大人」から「どうしようもない現実とそれを追認する大人」に変わったのは必然だろう。そしてどうしようもない現実はどうしようもないので、しょうがないから子どもたちには恋愛・友情・自己実現のような「セイシュン」の物語を与えておこうという悲痛さがある。そういうわけで、僕の世界観では、このアニメはアニメの外の現実に訴えかける力のある作品とは思えなかった。
大人はつらいよ
作中で何度も「大人」「子供」という言葉が使われている。大人はずるいし嘘つきだし、不自由だ。部下の命を守らなければいけないから、ガス爆発や土砂崩れの危険性があれば引き下がるしかない。子供や従業員を養わねばならないから、汚い方法で金を稼がねばならない。一方で子供は自分のことだけ考えていればいい。自分が拒絶されるリスクさえ呑めれば、自分のすべてをさらけ出してぶつかりあえるし、そうすれば本当の友達になれるかもしれない。
大人の僕にとって救いになったのは最後の「いってきます」「いってらっしゃい」だ。千代野秀雄は議員であり、父親であり、子供のようにすべてをさらけだすコミュニケーションはもうできない立場になってしまったかもしれない。それでも、まずはありきたりな挨拶からはじめれば、いつかはわかりあえるという希望を感じさせるラストシーンだったと思う。
マレットォォォォ!!!!!
これは許せないでしょ。いや中盤のあるセリフで気づいていたけど、これは許せん!!!!!!!!!守くんの童貞を返せ!!!!!
テクニカル
演出
特に手落ちを認識した箇所はないのでよくやっていたと思う。印象的なのは香織の回想シーンの照明の使い方。打算を含んだ香織の笑顔を光と影ではっきり二分するカットは強烈だった。
作画
劇場アニメとしては若干アベレージを下回るくらい
- 頭がデカすぎるキャラデザには最後まで慣れなかった
- 転機となるシーンはよく動いてた
- 重機は CG モデルが作られているにもかかわらず、作画でカッコいい影をつけてケレン味たっぷりに動かすシーンがあって浮いてた(好き)
- 重機作画監督: 東賢太郎
背景
とてもよかった。特に天候や自然物。監督インタビューによると工場の描写にもこだわっていたようだが、それは僕にはあまり刺さらなかった。
小ネタ
- 開幕キャラ見せからのヒロインと手が触れ合って「あっ ♡」までの展開にスピード感がありすぎて圧倒された。異世界転生のトラックノルマと似た感覚があった。
- 家出を決めてからの OP に合わせてのメンバー紹介も速かった。お約束だからすっ飛ばすねというメッセージを感じてしまう作りはあまり好きではないが、尺は有限なのでこれもアリだろう
- 鑑賞後に同行者に「夕張が舞台だよね」と言われてハッとした。なるほど、北海道、廃坑、人口流出と言えば夕張だ。
- 都合のいいタイミングで土砂崩れ起きるので実質『空の青さを知る人よ』
- 守の自室が広すぎる。北海道だから土地はあるのだろうか。ティッシュ・ゴミ箱は部屋が映る時間が短すぎて未確認なので誰か見てきてください
- 妹が急に部屋に入ってくるシーン、絶対シコってたでしょ
- ヒロインがレズビアンなんだがそれを全面に押し出すわけでもなく、ただ単に物語のパーツの一つとして組み込んでいたのはすごい 2019 年的感覚だと思う(褒めてる)。「気持ちを伝えると迷惑になる」みたいなセリフはそういう意味だったのかと驚いた。
- 「アップの U だ」は語感もどうでもいい知識をひけらかしてる感も「匹夫の勇」と一致していてめちゃくちゃ笑ってしまった。悪いオタクなので
- 法律なんかやってもしょうがないですよ。時代は戦史です。
- 入国管理局の非人道性が話題になっているタイミングで不法滞在者を出してくるのは攻めすぎ。好き。