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『羅小黒戦記(罗小黑战记)』を見た

· 10 min read

中国のwebアニメの劇場版らしいがwebアニメは未見。とても良かった。子供と見に行くべきは『海獣の子供』じゃなくてこれですよ。

ストーリー

 冒頭で中国当局の上映許可が表示されたので「中国共産党に許された映画」という視点を持たざるを得なかった。人間が妖精のすみかを開発していく様子は漢民族と少数民族の関係を想起させられ、これ大丈夫か?と思った。しかし最終的には妖精が人間に合わせていくしかないよねという話になったのでよかったのだろう。故郷を取り返したいと願う风息にも、人間との共存のバランスを守ろうとする無限にもそれぞれの正義がある。どちらが善でどちらが悪なのか名言はされないが、小黒が自ら片方を選択するという話だったのだと思う。「善と悪」は繰り返し扱われており、無限は小黒に「お前に善と悪がわかるのか」とか「力を悪いことに使わないでほしい」などと言っている。风息と決着が着いた後も「(风息が善か悪か)お前にはわかるはずだ」と言っていた。これに対して小黒の中にどういう回答があったのか、僕にはあまり自信がない。もしかしたら中国人の観客には自明に风息は悪だったのかもしれない。

 これまでの中国アニメで感じていたような文化の差を感じる場面は少なかった。敢えて言うなら時代性のようなものはよくわからなかった。人間の開発に先住者が怒るっていう話は日本だと25年前に『平成狸合戦ぽんぽこ』でやってるし、それを超えるなんらかの問題提起があったようには思えない。日本語字幕は日本語話者がチェックしてなさそうなレベルで下手。

 ギャグの切れ味が素晴らしく、起承転結で言うところの起と結だけで笑わせるスピード感のあるギャグが大量にあって中国人観客と一緒に笑っていた。

画面

 とにかく作画は全編すごい。
芝居はしっかり枚数を使って細かい動きや表情を表現していたので、キャラクターの感情がよく伝わってきた。シンプルかつ難しいことだが特定箇所ではなく「全部良い」ので、急なスタイルの変化などに変に没入が削がれることなく、描かれるキャラクターの魅力を存分に楽しめた。
アクションはNARUTOスタイル(NARUTOみたことないけど)というか中村豊スタイルというか、人間の動き自体は超高速で目ではギリギリ捉えきれないスピードで書いておいて、それによって環境が変化する(地面がえぐれるとか爆発するとか)様子によってパワーを表現するスタイルだった。あまり好みじゃないんだが、出来は良かった。ただ、同じスタイルのアクションが長く続きすぎたので若干飽きた。アクションの中に物語上意味のある変化があまりなかったのかもしれない。たとえばアクションの中でも成長や感情、人間関係などを描くことはできるのだが、この作品についてはそういうものがあまりなく、ただ派手なアクションが単調にスケールアップしながら続いていた、アクションのためのアクションに過ぎない感じた。

 キャラクターデザインはジャパニメーションに比べると線が少なめ。太くて柔らかい線に撮影処理は少なめ(キャラに被写界深度が乗ってるカットもないわけではない)で写実志向ではない。

 背景画はポスト『君の名は。』な感じ。特に空の色合いの表現が素晴らしかった。

音楽

クラシカルな編成で好みだったが、特に記憶に残ってはいない。

自分の頭を整理するため書いたあらすじ

小黒は猫の妖精。森で暮らしていたが開発によって森は破壊されてしまった。次のすみかを探してさまようなかで同じく妖精の风息に助けられ、彼と仲間たちの秘密のすみかである孤島に招かれる。しかし次の朝に無限という人間が襲来し、风息たちは小黒を残して逃げ出す。無限は小黒を拘束し、いかだで島を脱出して会館と呼ばれる場所に連れて行こうとする。

小黒は荒れた海で身を守るために、とっさに「領域」と呼ばれる能力を発動させる。それは自分の思い通りになる空間を発生させる能力だった。無限も同じ系統の能力を持っていて(たぶん)、小黒に力の使い方を指導しようとする。小黒はまだ無限を信用していなかったが、力をつければ無限から逃げ出せるようになるという理由で指導を受けるようになった。

やがていかだが岸に着き、旅路は陸路に入った。無限と同じ会館の執行人である妖精たちが現れ、妖精と人間の共生についてそれぞれの考えを小黒に語る。あるものは小黒と同じく故郷を奪われたわだかまりを抱えており、またあるものは人間が生み出す技術や文化を楽しんでいた。

旅はさらに進み、会館がある都市部に入る。ここで小黒は人間社会に溶け込んで生きる妖精たちの姿を見ることになる。そこに风息の一味が現れ小黒をさらっていく。小黒と风息は再開を喜ぶが、そこで风息は自らの目的を語る。それは自分の故郷であった都市を「領域」の能力によって支配し、人間を追い出して妖精の楽園を作ることだった。风息は「領域」の能力を持つ小黒に協力を求めるが、小黒が拒んだので「強奪」の能力を発動して小黒の「領域」の能力を命もろとも奪った。

风息とその一味はついに「領域」を発動させる。無限は风息の領域に侵入して风息を倒そうとするが、他人の領域の中で不利な戦いを強いられる。しかしそこに小黒が現れた。本来「領域」の能力は奪われると死ぬのだが、小黒は2つ持っていたので死ななかった(謎)。风息は負けを悟ると本来の木の能力で自らを大樹に変化させた。

小黒は無限の弟子として旅を続ける。