『大人になりたくない』
脚本:雪室俊一
演出:森田浩光
作画監督:見陰智史
仕上:中沢邦夫
美術:佐藤博
将来の夢。堀川はいろいろな料金が上がるので大人になりたくない。カツオも大人になりたくない。5年生がちょうどいい。幼すぎず、ドラマの大人の恋愛もすこしわかる。さらに成長するとお金もどんどんかかるようになる。波平とフネはカツオが将来のことを考えていることに関心する。翌日、雪室5人衆(雪室俊一はカツオ・中島・花沢・早川・カオリの5人が教室の後ろで並んで喋っているシーンを頻繁に書く。中島が大人っぽさを披露し、女子3人がそれを褒め、カツオが拗ねるのがお約束)の世間話。中島が大人の切符で電車に乗った。中島はそれだけで景色が違って見えたという。それに比べてカツオは子ども丸出しと言われ心外。実はカツオも大人の切符で野球に入ったことがあった。早川の母も大人料金になったときに2枚買って1枚を記念にとってある。堀川、年を取るとシルバーパスがもらえることに気づく。これオチてないな…。
怒らないで「どうしてなりたくない?」と聞いてくれる先生、いい先生ですね… #sazaesan
「この程度」ってことはもっと過激なことも知ってるんですかねカツオは… #sazaesan
「中島くんが大人になった♂」 #sazaesan
『愛しのやきいも』
脚本:広田光毅
演出:神原雄二
作画監督:石丸哲也
仕上:千代間由佳
美術:佐藤博
夜に焼き芋の屋台がうるさくて眠れないタラオ。明くる日、サザエはスーパーで焼き芋を買い逃す。ウキエに遭遇して隣町で買ったという焼き芋を分けてもらう。帰って食べようと思ったらノリスケが勝手に食べてしまう。「ハー!!」と激怒するサザエ。帰宅してきたマスオも会社で焼き芋を食べていた。ノリスケが謝罪にスイートポテトを持ってくるがサザエは焼き芋が食べたい。マスオが持っていた電球すら焼き芋に見えてしまう。また明くる日、芋を買ってくるがオーブンが壊れていた。見かねてタラオが新聞紙で焼き芋を作ってくれた。次の日、道で焼き芋の屋台を見つける。風邪で休んでいたとのこと。帰宅してみるとウラオバが焼き芋をくれた。波平とマスオも買って帰ってきた。サザエは嬉しそうに食べて、屋台でもまた焼き芋を買って終わり。意味分かんねえな。なんだこれ。
サザエ病気でしょ… #sazaesan
冷静にサザエがここまで焼き芋に執着する理由よくわかんなくないですか? #sazaesan
ウキエさんに俺のアツアツのサツマイモを食べさせたくなる話でした
『秋ふかし、隣は何を…?』
脚本:城山昇
演出:山崎茂
作画監督:鈴木佐智子
仕上:磯部知子
美術:小日向乃理子
あらすじ
冒頭「人生なんて儚くて虚しいもんだわ。花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」などと縁側で世を儚むサザエだが、鍋焼きうどんが来たと言われると1コマ作画で台所へすっ飛んでいった。Bに引き続いてサザエの食への貪欲さが描かれた。カツオが勉強しているという異常事態に驚くサザエとフネ。カツオは勉強していることを見てほしそうだ。
サザエは花沢に会い、カツオが勉強をしている理由を知る。花沢が父親にコートをねだったところ「将を射んと欲すればまず馬を射よ」の格言とともに、直接ではなく側面から買ってもらえるような状況を作るアプローチをせよと言われた。花沢は母親の機嫌を取るためお遣いをし、それを聞いたカツオもまた、新しいサッカーボールを買ってもらうために勉強で波平の機嫌を取ろうとしていたのだ。
夜、波平が帰宅してもカツオは出迎えに出ない。いぶかる波平に対してワカメは「お勉強」と答える。波平は邪魔をしてはいけないと考えてカツオに声をかけないが、それでは困るカツオは自分でふすまを開けた。しかしフネとサザエは「本物の勉強に変わるかもしれない」と相談し、サザエはカツオの打算を無力化すべくふすまをまた閉めてしまった。カツオは面白くない。ここでマスオもサザエにカツオの意図を聞かされる。マスオは「秋ふかし、隣は何をする人ぞ」と諳んじる(正確には「秋深き」らしい)。サザエに同意して言及しないことにする。
そんな合意のせいで、カツオが珍しく勉強しているのに夕食でも誰もそれに言及しない。夜、波平が居室で俳句を詠んでいる。「夜寒かないずこの佳人のくしゃみやら」。波平の反応が気になって部屋を覗いていたカツオが入り、その句を褒める。が、「佳人」の意味がわかっていなかったせいで逆に勉強が足りないと言われてしまう。
明くる日、カツオが友人らと空き地でサッカーをしている。カツオのボールだけが汚い。波平はそれに気づくが『貫禄か」「大事に使いなさい」とだけいって去る。またも目論見が外れ「新しいボールがほしいんだよ」と思いつつうなだれるカツオ。
帰宅後、波平はカツオを呼ぶ。波平はカツオの狙いがわかっていた。「気づかんでどうする。父親だぞ」。しかし呼ばれたカツオは気づかれているなんて思いもせず、叱られる理由が思い当たらないと言う。開口一番「新しいボールが欲しいんだろう」と言う波平。喜びのあまりカツオは波平に抱きつく。あまりの勢いに波平は咳き込む。
カツオがもうすぐお別れだからと古いサッカーボールを洗っている。サザエと傷ひとつひとつに歴史が刻まれていると話す。カツオはボールとの別れが惜しくなり、新しいボールはいらないと波平に言う。カツオはボールがいらなくなったのに勉強をしている。が、宿題を忘れていただけだった。
夜、雨樋からバケツに滴る雨音を聴きながら「秋の夜長か」「秋深しね」と言い合うマスオとサザエ。
考察
キャラの持っている情報に差をつける
これは城山先生のマスターピースだ。城山先生といえば複数のキャラが違う情報や意図を持ちながら状況を複雑化していく展開を得意としている。冒頭でサザエは花沢さんに会うまでカツオの勉強の意図を知らないし、その情報がフネやマスオに伝達される過程も自明のものとせず、きちんとその場面を描きつつフネやマスオの反応も描いている。波平もいつの間にかカツオの意図に気づいていたが、「気づいている」という事実には他の誰も気づいていない(おそらくカツオが出迎えに来なかったときからずっと予感はあって、空き地でサッカーしているのを見たときに完全に理解したのだろう)。
「ある事実を知っている」こと、そして「知っていることを知っている」ことが絡まっていくのを上手く活用して、城山先生は磯野家の人間関係を繊細に描いている。カツオは「サッカーボールが欲しい」という本来の意図を知られていることに気づいていない。サザエは知ったうえでその情報を利用してカツオをコントロールしようとする。そして波平は知った上で知っていることを隠しつつカツオを見守っている。ここに波平の父親としての度量がある。
このエピソードでカツオはサッカーボールを買ってもらうために心理戦を挑む。しかしこれはひとつの具体例に過ぎず、本質ではない。その証拠に、最後にカツオは新しいサッカーボールはいらないことに気づく。むしろ本質はカツオが波平に本心を隠す点にある。具体的に言えばカツオが波平の帰宅の出迎えに来なくなり、波平が受け止められないほどにカツオが大きく成長するということだ。これは未来に必ず起きる。
このエピソードではそんなカツオの思春期の前触れ(これを秋という季節と重ねている)を描きつつ、いつか本格的にその時期が来ても、波平はカツオを辛抱強く見守ることができるだろうし、家族の支えがあればカツオは自分で本当に必要な未来を選び取っていけるということを描いている。波平がフネに命じてカツオを呼び出すような古い家父長制的描写もあるが、それも含めてこれが城山先生の「父と子」像なのだろう。
Aパートはカツオがずっと小学5年生でいたいという話だったが、それに呼応するかのように(実際のところ脚本家同士で相談しているかは不明だ)カツオはいつまでも小学5年生ではいられないし、波平とカツオの関係もいつまでも同じではないというある種残酷なエピソードとなった。冒頭のサザエの意味深な愁思もそれを暗示している。しかし残酷さの中にも未来(サザエさん時空のなかで未来を描くためにサッカーボールという小道具が必要だったのだ)への希望を持たせるこのエピソードは、作品No.8000にふさわしい名作となった。
自然な会話に情報を盛り込む
自然というのは説明的ではないという意味だ。キャラクターが視聴者に向けて説明するような言葉を使わず、あくまでキャラクターとキャラクターの間で自然に発生しそうな会話の中で視聴者に必要な情報を提示する技術が発揮されていたシーンがあった。それがサザエと花沢の会話だ。
このシーンの情報密度は凄まじい。サザエが花沢に会うとまず「あら花沢さん、お遣い?」「はい」「偉いわねえ」という会話になる。ここで既に花沢さんが利他的な「偉い」行動をしているということが提示される。そして「将を射んと欲すれば〜」の話のあと、花沢が買い物バッグを指して「私の馬です」と言うことで、花沢が母親の機嫌を取ろうとしていることが明らかになる。説明的にならない会話の流れの中で情報を美しく連鎖的に提示し、何が起きているかを理解させる技巧はまさしく「技の城山」である。
作品No.8000 #sazae #sazae #sazaesan #tarawoshine #fujitv https://t.co/TieLT7TsIW
開幕、サザエが知らない何かを花沢さんが知っているという城山先生的知識格差メソッドだ #sazaesan
2019/10/13 18:52:12これと対比するようにカツオは波平の様子を見に行く。カツオは波平と違って部屋に入っていくのだが
カツオが波平を出し抜いてると思いこんでいるけど波平はちゃんとお見通しというのが良いし、波平の予想以上にカツオは大きく成長しているというのもいい…城山先生の親子観、そしてボールの傷という歴史への視点…これが教養 #sazaesan
ピリカ・ラザンギという甘い食べ物@mynetworks666